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【国際】エジプトで大規模デモが発生、内戦に発展する可能性もー日本への影響は?

エジプトの軍最高評議会のシシ議長は24日、「イスラム勢力の暴力とテロリズムに対抗するため」として軍を支持する国民に大規模デモを起こすよう呼びかけました。この発言に対し、イスラム勢力であるムスリム同胞団は反発、緊張が高まっています。エジプト国内はモルシ大統領の対人でイスラム勢力と反イスラム勢力の間に亀裂が生じており、

今回の発言がその溝をさらに深め、内戦に発展する可能性もあるのではないか、と懸念されています。

今月3日、民主化運動で打倒されたムバラク政権に替わって大統領となったモルシ氏がエジプト軍によって解任、大統領権限を剥奪されています。モルシ氏は民主化後の初の大統領として期待されていましたが、出身がイスラム勢力であるムスリム同胞団だったこともあり、エジプトのイスラム国家化を急ぎました。その結果、民主化以前よりも国民が困窮してしまうなど経済面での無策が露呈し、支持が急落。大統領就任後わずか1年で解任となりました。

その後、エジプト軍の軍最高評議会議長であるシン氏がモルシ氏を追放、現行憲法を停止して権力の座につきました。軍による実質的なクーデターです。

しかし、モルシ氏の支持基盤であるムスリム同胞団はこれに反発、連日各地でモルシ氏復帰のデモを繰り返しています。

 

エジプトでは、今月上旬の軍による事実上のクーデターのあと、大統領職を解任されたモルシ氏の支持母体であるムスリム同胞団が、治安部隊や反モルシ派と各地で衝突するなど混乱が続いており、24日には北部のマンスーラで、爆弾テロで1人が死亡、市民を含む28人がけがをする事態となっています。
こうした状況を受けて、軍は、25日、フェイスブックで「26日以降は暴力やテロへの対応を変える」として、これまでの方針を変えてモルシ派の暴力的な行為に対しては、今後、厳しく取り締まる姿勢を強調しました。
これに対して、ムスリム同胞団は「軍の仕事はエジプト国民に銃を向けることではない。クーデターを認めずデモを続けよう」という声明を発表し、大規模な抗議デモを呼びかけました。

(NHK)

シシ氏のスピーチは、イスラム教徒に、警察国家の再現という恐怖を与えているものの、逆に、それが同胞団を強化してしまう可能性もあるというのだ。
「弾圧」されれば、同胞団はそれをたてにとって、より「悪くなる」資格を得てしまう。効果的に大義を振りかざし、民衆に訴えることができるだろう」、との指摘だ。
実際、暫定政権に対し、モルシ氏の大統領への復権を求めて座り込み運動を続けてきた同胞団と、反モルシ政権のデモが衝突するケースが頻発しているエジプトでは、「謎の部隊」によるデモ隊襲撃が報告されているほか、あきらかに同胞団を「挑発する」目的のデモも散見されるという。

財経新聞

 

【国際】エジプトでデモ隊衝突・・・アラブの春は失敗だったのか?”でも書いたように、中東と北アフリカで連続して発生した民主化運動“アラブの春”は独裁政権打倒後、明確なビジョンが描けずに迷走を続けています。エジプトの状況は内戦に発展する可能性もあり、特に悪いようです。この事態は、おそらく周辺諸国にも影響を及ぼすでしょう。今回のエジプトの事態はイスラム派と反イスラム派という構図でもあり、周辺のイスラム国家がなにかしら動きを見せる可能性も否定できません。

 

さて、この政変は日本にどのような影響をおよぼすでしょうか?

エジプトというと古代遺跡の観光、というイメージが強いでしょう。実際、日本からのエジプトへの渡航者は約8万人、その大部分が観光客です。その観光客も政変以降は激減し、外務省は現在、エジプトへの渡航延期を呼びかけています。観光で潤っていたエジプトの観光産業は渡航客激減で悲鳴を上げているようです。

しかし、日本とエジプトの関係はそれだけではありません。意外に知られていないようですが、日本とエジプトは貿易面でも関係を強めていました。

 

エジプトの経済規模は、2009年のGDPが約1879億ドル(約15.4兆円)で、これは静岡県とほぼ同じ経済規模。特に貿易分野では、両国の貿易量は、近年増加傾向にある。エジプト側からの輸出額は、2005年に天然ガスの対日輸出が開始されて以降、大幅に増加し、2008年の輸入額は1653億円となった。これは2001年度の93億円と比較すると、10倍以上増加していることになる。

(MONEYZINE“情勢が緊迫するエジプト 近年日本との関係深まり、貿易額急増していた”)

 

このように、エジプトからの天然ガス輸入が大幅に増えていました。

 

アフリカからのLNG(液化天然ガス)の輸入量が急増している。先月発表になった貿易統計によると、2012年はアフリカ産LNGの輸入量が前年比で約2倍の878万トンに達し、全輸入量の約10%を占めた。2011年も2010年比で約2.5倍も伸びており、LNG輸入に占めるアフリカ産の重要性が高まっている。

(中略)

だが、増加分の約1700万トンすべてカタールで補うのは難しく、新たな調達先としてアフリカに注目が集まっている。アフリカ産の内訳を詳しく見ると、最も多いのがナイジェリアの478万トンで、赤道ギニアの279万トン、エジプトの103万トンと続く。ガス関連施設で人質事件があったアルジェリアからも16万トン輸入していた。アフリカ諸国の中でも伸びが著しいのがナイジェリア産で、2011年に前年比3倍、2012年にさらに同2.5倍と2年連続して大幅増となった。

日経ビジネスアフリカ産LNG急増 ナイジェリアが日本救う”)

 

このように、日本の天然ガス調達先としてアフリカの存在感が高まっており、その中にエジプトも含まれています。全体からみればエジプトからの輸入量は1%にもなりませんが、石油や天然ガスのタンカーが運行するスエズ運河が近くにある、という意味では交通の要衝でもあり、エジプトで内戦が起こったとすると中東や北アフリカからの石油や天然ガス輸出に大きな影響を及ぼす可能性も考えられます。

 

ですから、今回のエジプト政変は「日本からは遠い国のおはなし」では決してないのです。

 

 

【ニュースソース】

シシ国防相、テロとの戦いを促す、エジプト
世界日報

エジプト情勢緊迫 国軍最後通告 24時間以内にも衝突の危険性
地震予測検証 / 防災情報 ハザードラボ

エジプト軍 強硬策示唆で緊張高まる
NHK

エジプト軍、国民に「反テロリズム」の大規模デモを呼びかけ 結果はどうなる?
財経新聞

エジプト:国防相の攻撃示唆発言を同胞団が批判
毎日新聞 

エジプト:国防相、デモ呼び掛け 同胞団への攻撃正当化か
毎日新聞

国民に支持デモ呼び掛け=モルシ派締め付けも-エジプト軍
時事通信

エジプト 軍、大規模デモ呼び掛け 同胞団反発、衝突の恐れ
東京新聞

エジプト、軍支持の大規模デモ
日本経済新聞

エジプト、デモ隊衝突5人死亡 140人負傷
47NEWS