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【政治】「特定秘密保護法案」原案提出、パブリックコメントでは8割が反対

政府は26日、国防や外交に関する機密漏洩に罰則を課す「特定秘密保護法」の原案を自民党のプロジェクトチームに提示しました。与党との調整の後、10月15日から開かれる予定の臨時国会で審議される見通しです。

藤原紀香さんがご自身のブログで紹介し、パブリックコメント投稿を呼びかけていたことで話題となった「特定秘密保護法」、いわゆる秘密保全法。このブログでもそのメリットとデメリットを私見の形で取り上げました。パブリックコメントは9月17日に閉め切られており、26日の政府発表では「8割が反対意見だった」ことを明らかにしています。

 

一般から意見を募るパブリックコメントでおよそ9万件の意見が寄せられ、このうちおよそ8割が法案に反対する意見だったことを明らかにしました。

(NHK)

 

 

この原案のポイントについて、時事通信がまとめていたので引用します。

一、行政機関の長は所掌事務で、特に秘匿が必要なものを特定秘密として指定。

一、行政機関の長は、5年を超えない範囲で指定の有効期間を設定。延長も可能。

一、特定秘密は、指定した行政機関の長の同意があれば利用可能。

一、特定秘密を取り扱えるのは適性評価を受けた者。政務三役や首相補佐官、政令で定める者は例外

一、適性評価は、テロリズムとの関わりや犯罪歴、飲酒、借金、家族の国籍などについて実施。

一、報道の自由に十分配慮し、拡張解釈で国民の基本的人権を不当に侵害してはならない。

一、特定秘密の取り扱いに従事する者が秘密を漏らしたときは、10年以下の懲役または1千万円以下の罰金。

(時事通信)

 

各紙報じているように、原案の6項目目に「報道の自由に十分配慮し」と明記されており、懸念されていた報道規制に関しては不安を払拭する形となっています。そのためか、これまで非常に攻撃的だった論調が控えめになっているように感じます。

一方で各紙の見出しを見ると「知る権利」については明記されていない、と懸念を表明している記事もあります。

 

だが条文がどんな書きぶりになろうとも、危険な本質は変わらない。この法案は「知る権利」などを侵害する根本的な問題をはらんでいる。「特定秘密」の範囲は明確でなく、指定する閣僚ら、行政機関の長の解釈次第だ。 

(高知新聞)

日本新聞協会は「特定秘密の範囲があいまいで、知る権利を侵害しかねない」と批判した。報道機関による取材が処罰対象になりうるとの懸念も表明した。

(47News)

 

 

これに対し、

 

法案をめぐっては、過度の秘密主義に陥り、報道の自由が損なわれかねないとの懸念があったが、報道の自由へ配慮を明記した。国民の「知る権利」は明文化しなかったが、情報公開請求が認められた場合は特定秘密を開示することもありうるとの規定を設けた。

(SankeiBiz)

 

とあるように、「知る権利」を否定するものではない、とする記事も見られました。

 

「知る権利」については憲法に規定がないことから、盛り込まれなかった。

(時事通信)

 

このように、「知る権利」についての定義がないため原案には盛り込まれておらず、「今後慎重な議論を要する」としています。

 

さて、ここまで再三あらわれる「知る権利」とはそもそもなんなのでしょうか?

 

表現の自由より派生した権利としては、「知る権利」がある。アイザイア・バーリンが著書「二つの自由の概念」で自由は積極的自由と消極的自由があると述べていることと同じく、国などに対して情報の提供を求める権利(積極的自由)と国民が国家の妨害を受けずに自由に情報を受取る権利(消極的自由)がある。

Wikipedia知る権利”)

 

Wikipediaによれば、知る権利とはつまり「情報開示請求権」にあたります。これはWikipediaに記述されているとおり、表現の自由、言論の自由から派生した概念で、比較的新しいものとされています。

 

国などに対して情報の提供を求める権利としての知る権利は、国民主権の原理に直接に基礎付けられる。国民主権の重大な意味の一つに、「国政の最終決定権を国民が有すること」があるが、最終決定権の行使にはその前提として、判断の材料となる情報が与えられていなくてはならず、これを提供することは国の責務と考えられるからである。

Wikipedia知る権利”)

 

さらにいえば、国民が自分の判断で投票などの政治判断を行う、国民主権のための基本的な条件であるといえます。したがって、そのような政治的判断を妨げる法案は問題であるといえるでしょう。

 

しかし、ここには「表現の自由」と「プライバシーの侵害」という対立する利害があるように、「情報開示」と「国家安全の侵害」という対立する利害があります。

先日、このブログに書いた私見にある通り、この法案はそもそも「スパイ防止法」として考えられています。その先には日本版国家安全保障局NSC)の設立があります。外交上、国防上の機密が海外に漏洩することを防止して日本の真の独立を目指すもの、ともいわれています。

※現在の日本は事実上米国の占領下にあり、またスパイを防止する仕組みがないために海外に国家機密が自由に漏洩されている、という状態にあります。これは中曽根政権の時代から問題にされていました。

ただ、それが行き過ぎて本来あるべき国民主権が脅かされる可能性がある点は忘れてはなりません。当方としては、特定秘密法案について「国民主権を侵害しない規定を明記した上で」という条件付き賛成の立場をとっています。

 

エドワード・スノーデン氏が暴露した米国国家安全保障局(NSA)による個人情報収集問題が話題となりました。しかし、米国世論としては「テロ防止のためにはやむなし」に傾いていたようです。NSCもそのような機能を果たすようになるのでしょうか。もしそうなるとしたら、我々の身の安全と引き換えに、一部の自由を国に差し出すことになります。周辺国、とくに中国と韓国が日本に対して軍事的な圧力を強めてきている昨今、自由をとるか安全をとるか、という局面にたたされています。

 

 

【ニュースソース】

国会を骨抜きにする秘密保護法案 政府判断で「秘密会」に
東京新聞

政府、「特定秘密保護法案」の原案を自民党に提示
FNN 

【秘密保護法案】危険な本質は変わらない
高知新聞 

新聞協会、日弁連が反対 特定秘密保護法案
47NEWS

「完全にブロックされている」のは、汚染水ではなく特定秘密保護法案である。
ハフィントンポスト

秘密保護法案“報道の自由”に配慮明記
NHK

特定秘密保護法原案 「報道の自由配慮」明記 政府が自民に提示
SankeiBiz

特定秘密保護法原案ポイント
時事通信

秘密保護法案で知る権利は? 政府の意見公募8割が反対論
TBS News

「報道の自由に配慮」明記 秘密保護法の政府原案
日本経済新聞

「報道の自由」への配慮明記…秘密保護法原案
読売新聞

秘密保護法案:「知る権利」明記見送り…政府、自民に原案
毎日新聞

報道の自由「十分に配慮」 秘密保護法原案
読売テレビ

政府が秘密保護法原案を自民に 「知る権利」明記せず
信濃毎日新聞

「報道の自由」明記=秘密保護法原案-意見公募は反対8割・政府
時事通信

特定秘密保護法原案「知る権利」明記されず
テレビ朝日