ニュースを比較してみるブログ

世にあふれるニュースを報道のされ方を比較、掘り下げていきます。国際、政治、経済を主に取り上げています。やや右寄りの傾向あり。

【国際】NSA個人情報収集問題、EUも監視対象だったことが明らかに

ドイツの週刊誌“シュピーゲル”は30日までに、米国国家安全保障局(NSA)がドイツ国内で毎月およそ5億件に上る通話記録などの個人情報を収集していた、と報じました。報道を受けてドイツの検察当局が捜査に乗り出すとともに、ロイトホイサーシュナレンベルガー法相は米国に対し「EUに対する盗聴行為に対して説明をすべき」と発言しています。

NSAが対象としていたのはドイツの他、ワシントンのEU代表部、ニューヨークにあるEUの国連代表部、ベルギー・ブリュッセルのEU本部などとしています。これらの情報は潜伏先を香港からモスクワに移した元CIA職員エドワード・スノーデン氏が保有する極秘文書をもとにしているとのこと。

 

欧州議会のシュルツ議長は「もし真実ならば、EUと米国の関係に打撃となるきわめて深刻な事態だ」と述べ、米側に解明を要求した。ドイツの議員からは、米国とEUの自由貿易協定交渉の中断を求める声も出ており、今後、米国と欧州の関係が緊張する可能性もある。

(朝日新聞)

EUはアメリカとの間で、自由貿易協定の締結を目指した交渉を開始することを先のG8サミット=主要国首脳会議の場で宣言したばかりで、アメリカ政府によるEU機関での盗聴疑惑の問題は、交渉の行方にも影を落とすことになりそうです。

(NHK)

 

各紙報じているように、EUを標的とした情報収集活動が事実だとすると、米国に対する国際的な批判は避けられません。また、現在交渉中の自由貿易協定(FTA)の締結にも影響がでるでしょう。

 

はたして、この報道は事実なのでしょうか?

まずこの報道が事実だとしたら、米国の機密情報管理の脇が甘かった、と言わざるを得ません。スパイ活動は露見しないからこそ価値があるものだからです。

今回のNSAによる情報収集問題は米国国内だけでなく、中国、ロシア、EUを巻き込んだ大きな話になってきています。機密情報をリークしたスノーデン氏は「米国政府の不正が許せない」と道義的な観点から行動したと語っていますが、おそらくそれだけではこれほど大掛かりは話にはなっていないでしょう。裏で手引きしている、今回の件で利益を得る個人、組織、国が存在しているとみる方が自然と考えます。

 

  1. まず大きく取り上げられたのはスノーデン氏の中国スパイ疑惑でした。オバマ大統領と習国家主席との首脳会談が不発に終わった直後の事件だったこと、スパイが潜伏しやすい香港に滞在していたことなどの状況証拠から、疑いがかけられました。中国当局は当然その疑いを否定しますが、疑いを肯定する証拠も否定する証拠も得られていません。
  2. 米国の自作自演の線も否定できません。NSAの機密文書ということはトップシークレットのはずです。それを元CIA職員だったからといってリークできてしまうことに不自然さも感じます。米国市民に対するアンケートによると、国家の安全が守られるならば多少の個人情報収集は容認できる、との回答が半数以上を占めていました。対中国の外交カードのひとつとして、政治的あるいは軍事的圧力をかけるためのツールとして使おうという意図があるのかもしれません。
  3. ここでさらにEUが出てきました。米国とEUは自由貿易協定を締結しようと交渉を進めているところです。米国がEUを情報収集の標的としていたということは、この交渉にも少なからず影響が出るでしょう。ということは米国とEUの関係に亀裂が入ると得をする組織や国が動いている、と考えることもできます。米国とEUがFTAを結べば巨大な経済圏が出来上がります。それを脅威に感じるのは中国かロシアではないでしょうか。あるいは、FTAが締結されることでEU内の産業が蹂躙される可能性もあるため、EU内のFTA反対勢力が動いている可能性も否定できません。

 

いずれにしても世界スケールに発展してきているNSAによる情報収集問題。国際間のかけひきはまだまだ続きそうです。

 

 

【ニュースソース】

米国 EU機関に盗聴器をしかけてスパイ活動―マスコミ
VOR ロシアの声

ドイツ 米国にEUオフィス盗聴問題で説明を要求
VOR ロシアの声

EUも盗聴の標的に 米NSA「攻撃目標」 独誌報道
asahi.com

米情報機関 EU関連施設でも盗聴か
NHK

「欧州連合も米当局の監視対象」、独誌報道
AFPBB News

情報収集、EUも「標的」=米当局、施設に盗聴器-独誌
時事通信

EUも情報監視の対象か 米当局が盗聴器と独誌
日本経済新聞

米 独で毎月5億件の個人情報収集か
NHK

米の盗聴報道 EU側が反発強める
NHK