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【社会】研究データ改ざんのノバルティスファーマ社、研究費用と人員を丸抱えか

製薬会社ノバルティスファーマ社の高血圧治療薬「ディオバン」(一般名:バルサルタン)の臨床研究データが不正に操作されていたとする問題で、厚生労働省は9日、再発防止策を考える検討会の初会合を開きました。検討会では研究に関与した東京慈恵医大、京都府立医大、千葉大、名古屋大、滋賀医大などが調査結果を報告、カルテと論文データに食い違いがあったこと、それがデータ改ざんだったのか入力ミスだったのかは調査が必要であること、などを報告。ノバルティスファーマ社は大学に合計11億3000万円の寄付金を支払っていたことを明らかにしました。

 

また、大阪市立大学の講師の肩書きで5つの大学の論文のデータ解析を行っていたノバルティス社員が大学側の会議に出席する際の旅費はすべて会社が負担するなど臨床研究の費用や人材が会社側の丸抱えだった可能性が高まっています。

(TBSニュース)

各研究室は寄付金を臨床研究に掛かる費用に充てていたとみられる。ノ社の元社員がデータ解析になどに関わっていたことも判明しており、医師が主導する臨床研究でありながら、製薬会社が費用や人員を丸抱えしていた可能性が高まった。

(47NEWS)

 

このように、本来は第三者の視点から研究をすべき立場の大学研究室に自社社員を送り込む、という中立性を欠く研究活動が行われていた可能性が高まってきています。

 

この問題の発端は2009年の論文です。

 

高血圧患者約3000人を、バルサルタン服用の約1500人と別の降圧剤服用の約1500人とに分けて、経過を比較。「バルサルタンには他の降圧剤より脳卒中を45%、狭心症を49%減らす効果がある」などと結論付け、09年に学会誌で発表した。
この日の発表によると、府立医大が、研究チームの事務局が保存していた患者データ約3000例について調査したところ、医師の入力データでは脳卒中などの発症に差が見られなかったのに、解析に使われたデータでは、バルサルタンの方が発症を抑制することになっていた。

(毎日新聞“降圧剤:データ操作 京都府立医大が謝罪 学長ら会見”)

 

つまり、通常の高血圧の治療だけでなく、脳卒中狭心症に効果がある、などとしてこれまでの薬とは違うことを強調するデータを論文で発表しています。そのため、従来の薬剤に新しい効果が追加されたとして新薬として認められたのです。

ところが、実際にはその効果はなく、従来の薬となんら変わらないものでした。

7月11日に京都府立医大の学長が記者会見で明らかにしました。この問題に対して開発元であるノバルティスファーマ社がどのように関与していたかが焦点となっていましたが、その後の調査で研究活動にノバルティスファーマ社が深く関与している可能性が高まってきています。

 

新薬開発は製薬会社にとって大きな利益のひとつです。ひとつ新薬を開発すれば数千億円、効果が高く人気がでればそれこそ数兆円の売上をもたらすことになります。ノバルティスファーマのディオバンは発売以来、累計で1兆2000億円を売り上げています。そのため製薬会社は新薬開発に膨大な費用と人材を投入しています。その結果次第では会社が大きく傾いてしまうこともあります。

※そのため、研究開発費が少なくてすむ後発薬、いわゆるジェネリック医薬品を専門に製造する沢井製薬といった製薬会社も存在するほどです。

 

そうした環境もあり、新薬の臨床試験でデータ改ざんが行われることはしばしばあるようです。比較的最近の事件では、

 

田辺三菱製薬(2010年)

製造会社である「バイファ」が人血清アルブミン製剤である「メドウェイ注」を厚生労働省への承認の申請を行った際に不純物の濃度を実際よりも低く見せかけたりアレルギー反応の陽性を陰性にデータを差し替えて16件の項目において改ざん

小林製薬(2013年)

メタボリック症候群など肥満症に効く市販薬の開発をめぐり、大阪市の病院が実施した臨床試験(治験)のデータの一部が改ざんされた疑いがあることが朝日新聞の調べでわかった。被験者72人の中に治験を実施した病院の職員6人が含まれ、4人の身長が実際より低く記録されていた。治験の条件を満たすため被験者が肥満体となるよう偽装された可能性がある。 

 

といったところが挙げられます。おそらく調べればもっと出てくるのではないでしょうか。データ改ざんだけでなく薬害事件も含めると、サリドマイド事件やミドリ十字薬害エイズ事件など、社会に衝撃を与えた事件が様々あります。

※たとえばサリドマイドの場合、光学異性体(分子構造がちょうど胸像反転しているもの。一般に異なる効果をもつ)が原因でしたが、それが十分に検証できなかった、データ改ざんというよりも研究不足のための事件でした。

※その他の過去の事件については製薬研究者の独り言“製薬会社の闇:捏造・改ざん・副作用…”をご覧ください。

 

私自身、かつて化学系の研究室に勤めていた経験がありますが、研究者として、自分の仮説に都合のいいようにデータを操作したい誘惑はとても強烈なのだそうです(考古学でも遺跡の捏造などがよくありますよね)。特に企業から出向して共同研究をしている企業の社員さんにとってはなおさらです。なにせ利益に直結するものですから。だからこそ、より中立的な立場で研究を行うことのできる機関が必要です。今回の件では多額の寄付金が大学に回ったようですが、研究者の倫理として、それを拒むだけの力も必要になるでしょう。

また、研究者としては、データに基づいた客観的な判断をくだし、ときに自分の立てた仮説を捨てる勇気も必要です。仮説はあくまで仮説にすぎず、それに反するデータが出たら新たに仮説を組み立てなければなりません。自身の仮説に固執していては、新しい理論など生まれないのです。

 

 

【ニュースソース】

厚労省検討委きょう初会合 再発防止、事実解明へ
MSN産経ニュース

ノ社元社員「所属先」実在せず 降圧剤データ操作問題
47NEWS

【降圧剤データ操作】5大学とノ社から報告 初の検討委
SankeiBiz

降圧剤データ操作、5大学に11億円寄付
キャリアブレイン

5大学に11億円超を寄付 降圧剤の臨床研究問題
47NEWS

臨床試験データ操作問題 滋賀医科大学でも相違が発覚
FNN

ノバルティス論文不正問題、5大学に11億円超 寄付
TBS News

【降圧剤データ操作】ノ社、5大学に11億3290万円 厚労省、初の検討委 千葉大、滋賀医大でもデータに複数の相違
MSN産経ニュース

製薬会社、5大学に11億円寄付 治療薬データ操作
日本経済新聞

5大学に11億円超す寄付 降圧剤データ不正、ノ社が丸抱えか
中国新聞

臨床研究データ改ざん、真相究明の議論開始(東京都)
日テレNEWS24

滋賀医大でノ社2人関与=5大学に11億円寄付—高血圧薬臨床不正で検討会・厚労省
ウォール・ストリート・ジャーナル日本版

薬のデータ操作問題 聞き取り要請へ
NHK

 

 

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