【ビジネス】NECがスマホ事業からの撤退を正式発表、スリム化で業績回復なるか
NECは31日、スマートフォンの新規開発と生産から撤退することを正式に発表しました。現在販売中の最新機種をもって販売も終了します。ただし、従来型携帯電話(ガラケー)の開発、生産は継続する模様。
「競争力の維持・強化にはスケールメリットが重要だが、当社の携帯電話端末事業は出荷台数が減少傾向で、今後の業績改善を見通すことは難しくなっている」と撤退理由を説明している。
(日経新聞)
NECは、レノボ側に50%以上の出資を求めていたが、折り合えなかった。6月に発売した夏モデルの国内販売台数は1万台余りと、NTTドコモによる他社端末への販売優遇策でNECのシェア(占有率)は落ち込んだ。このため、レノボはNECとの合弁が日本市場に進出する足場にはならないと判断した模様だ。
(毎日新聞)
携帯電話市場では国内メーカーが苦戦しています。国内でシェアトップのApple「iPhone」に加え、韓国勢の躍進が著しく、多くの国内メーカーの携帯電話事業は赤字経営となっています。加えてNTTドコモがソニーと韓国のサムスン電子の携帯電話端末を優先販売する「2トップ戦略」を打ち出すなどして、さらに国内メーカーは劣勢に立たされています。
調査会社のMM総研によると、2012年度通期の国内携帯電話出荷台数シェアはNECが8位の5.3%(前年比1.7%減)、ライバルの富士通は2位のシェア14.4%(前年比3.5%減)となっています。富士通もシェア2位とはいえ、前年に比べてシェアは落としていますし、2013年度4〜6月期決算では100億円を超える赤字となっており、非常に厳しい経営環境になっています。
スマートフォン出荷台数は2013年度 3,240万台(スマートフォン出荷台数比率76.8%)、2014年度 3,530万台(80.8%)、2015年度 3,560万台(82.2%)、2016年度 3,670万台(83.8%)、2017年度 3,750万台(85.2%)と予測。
(MM総研“2012年度通期国内携帯電話端末出荷概況”)
MM総研の予測では、スマートフォンの出荷台数は今後微増するものの、大きく伸びるものではないとしています。国内市場は飽和傾向にあり、国内で販売台数を伸ばすには他社のシェアを奪うほかありません。NTTドコモの「2トップ戦略」によって、国内メーカーはさらに苦境に立たされるでしょう。
そうした中、NECのスマホ事業撤退は正しい選択なのかもしれません。
「今後、携帯電話端末事業で培った無線通信や端末開発、ヒューマンインタフェースなどに関する技術・ノウハウを、当社が注力する社会ソリューション事業に活用する」(NEC)。これに伴い、NECカシオモバイルコミュニケーションズの従業員のうち、継続事業に従事する従業員以外は、NECグループ内で社会ソリューション事業を中心に再配置するとしている。
(ITpro)
とあるように、撤退後の人員は解雇ではなく配置換えをする方針のようです。従業員にとってはそこが救いでしょうか。
スマホ事業撤退後は社会インフラ事業に注力する、とのこと。NECというとパソコンメーカー、というイメージが非常に強いかと思いますが(パソコン事業もレノボに売却されてしまいましたが)、もともとは通信機器の技術に強い会社です。
戦前は、電話交換機などの通信機器の製造を主な事業としていた。1928年(昭和3年)に日本電気の丹羽保次郎、小林正次らが昭和天皇の即位大礼の写真のファクシミリ通信を成功させた業績で知られる。
その後、住友財閥に経営委託され、第二次世界大戦で日米関係が悪化すると住友グループ傘下となった。このため、1943年(昭和18年)から1945年(昭和20年)までのごく一時期であるが「住友通信工業」という社名を名乗っていた(住友電気工業が当時既に存在していたためこの社名になったようである)。大戦期は陸軍の無線機を一手に引き受け、電波警戒機の開発も行っていた。
Wikipediaにもある通り、戦前は電話交換機、戦中は軍の無線機を開発するなど、通信機器の開発を一手に引き受けていました。現在でも、通信用の海底ケーブルや通信衛星の開発をおこなっていますし、2010年に小惑星“イトカワ”から表面のサンプルを持ち帰ったとして話題になった探査衛生“はやぶさ”を開発したのも実はNECです。
NECは、防災科学技術研究所(以下、防災科研)が整備を進めている「日本海溝海底地震津波観測網」の観測システム設置作業として、海底ケーブルの敷設を開始した。
NECは携帯電話と直接通信できる次世代衛星を2017年度に実用化する。宇宙空間で直径30メートル程度の大型アンテナを広げて微弱な電波も受信できるため、携帯電話に小型通信用チップを搭載すれば通話やメールができる。
社会インフラ事業に注力する、というのはもともと強かった技術に立ち戻る、という意味合いもあるのでしょう。事業の多角化は収益源の確保に良い影響を与えていましたが、市場が飽和した今となっては、会社が大きくなり過ぎてしまい逆に足かせとなってしまいます。パソコン事業を売却し、スマホ開発からも撤退することで、巨大企業だったNECは少しずつコンパクトになっていくでしょう。もともと自社の強みだった事業に改めて注力することで、総崩れになっていたNECも回復できるかもしれません。
今回の事業撤退が吉と出るか凶と出るか、今後の経営手腕の見せ所です。
【ニュースソース】
NEC、シェア低迷のスマホの開発・生産から撤退の方針固める
FNN
NEC、スマートフォンからの撤退を正式発表 ガラケーの開発・生産は継続
ソフトバンク ビジネス+IT
NECカシオがスマホ事業から撤退 タブレット事業は継続
週アスPlus
NEC、スマホ撤退を正式発表……新規開発を中止、携帯電話端末事業を見直しへ
RBB Today
NEC、スマートフォン事業からの撤退を正式に発表
ASCII.jp
NECが“スマホ撤退”正式発表、現在販売中の機種で生産・販売終了。
ニコニコニュース
NECがスマホ事業から撤退、製品の新規開発中止を発表
財経新聞
NEC、スマートフォン事業から撤退
ケータイ Watch
NEC 、スマホの新規開発を中止 上期メドに業績への影響見極め
ロイター
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ガジェット通信
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サーチナニュース
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AV Watch
[CNET Japan] NECがスマートフォン事業から撤退--「業績改善の見通し難しい」
朝日新聞
NECがスマートフォン事業からの撤退を正式発表、従来型携帯電話の開発・生産は継続
Engadget 日本語版
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ITmedia
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ITmedia
NEC、スマートフォン事業から撤退 - 従来型携帯の開発・生産は継続
マイナビニュース
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MSN産経ニュース
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ITpro
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UPDATE 2-NEC 、スマホ撤退し携帯事業縮小 日本勢の苦境鮮明に
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NEC、スマートフォン事業から撤退 - ガラケーとタブレットは継続
マイナビニュース