ニュースを比較してみるブログ

世にあふれるニュースを報道のされ方を比較、掘り下げていきます。国際、政治、経済を主に取り上げています。やや右寄りの傾向あり。

【国際】ウィキリークス党を結成、オーストラリアでアサンジ氏が立候補

内部告発サイト“WikiLeaks”の代表で現在エクアドルの亡命申請中のジュリアン・アサンジ氏が25日、オーストラリアで9月以降に行われる予定の上院議員選挙に出馬することを明らかにしました。アサンジ氏はオーストラリア出身で、以前から上院選への立候補に意欲を見せていたそうです。

出馬にあたってアサンジ氏は今月はじめ、ジャーナリストや人権活動家を含む6名とともに「ウィキリークス等」を結成しています。すでに政党登録は済ませており、アサンジ氏ほか6名とともに立候補するとのことです。

 

政党活動を通じて、現在オーストラリアで大きな問題になっている東南アジアなどからの難民問題に取り組むほか、報道の自由の大切さを訴えていきたいとしています。

(NHK)

「透明性、説明責任、正義という党の基本的価値観のもと、税制改革や難民問題、温暖化対策など重要な案件を調査する」「不正確、公開性不足、不十分な情報に基づく法律や政府の政策は受け入れない」などとしている。

(朝日新聞)

 

として、ウィキリークスの理念である「情報公開による透明性」と「内部告発による不正をゆるさない姿勢」をオーストラリアの政治に持ち込む構えのようです。

 

仮にウィキリークス党が当選した場合、どのような役割を果たすことになるでしょうか。

 

ウィキリークスは、中国の反政府主義者と、台湾、欧米、オーストラリア、南アフリカのジャーナリスト、数学者、ベンチャー企業の技術者によって運営されている。

Wikipediaウィキリークス”)

 

とあり、WikiLeaksは反政府主義者やジャーナリストなど、どちらかといえば既得権力に対する抵抗勢力によって運営されています。その理念を政治に持ち込むとなると、日本でいえば共産党のような、与党が強くなりすぎないためのブレーキのような役割を果たすことになるでしょう。

私個人はウィキリークス党が与党になることはないだろう、むしろ与党になるべきではない、と考えています。ウィキリークスの元々の出自が政府に対する抵抗勢力であり、政府に対してもの申すことはできても、彼ら自身が政権運営をできるとは思えないからです。

ウィキリークス党の理念である「透明性、説明責任、正義」はとてもクリーンなイメージがあり、汚職や情報隠蔽などの汚いイメージのある政治の中にあって、人々に非常に分かりやすいメッセージを届けることができます。しかし、彼らが与党になったときになにが起こるでしょうか。おそらく彼らの掲げる「透明性、説明責任、正義」をふりかざした圧政が始まるでしょう。中国で共産主義国家が実現した結果あらわれたのは、これまで以上に苛烈な一党独裁政治でした。

だから、既得権力とその抵抗勢力という図式自体に意味があるのであり、いずれかが強くなりすぎる方が問題だと、私自身は考えます。

 

こうした話を聞くと、手塚治虫さんの名作“火の鳥”シリーズの一つ“太陽編”のラストを思い出します。“太陽編”は7世紀の飛鳥時代と21世紀の現代、権力に抵抗する若者二人の物語が語られていきます。そのラストは次のようになっています。

 

現代の物語は2000年ころです。火の鳥を崇める宗教組織”光”が権力を得て、それに抵抗する者はすべて地下都市へ強制的に追いやられます。地下都市では”シャドー”組織が、地下都市を解放するために光宗教組織を攻撃します。ついにはシャドー組織が勝利をおさめますが、権力を手中にした途端、シャドー組織の首領は新しい宗教組織”不滅教”をつくって、人々を従わせようとします。

(環境イーハトーブ手塚治虫の世界”)

 

宗教を利用して圧政をしいている政府に対し、抵抗勢力が武力革命を試みます。武力革命は最終的には成功、抵抗勢力が権力の座につきます。しかし、新しく権力の座についた抵抗勢力が行ったのは、新しい宗教による圧政でした。

同じことが2011年から2012年、中東と北アフリカで立て続けに起こった民主化革命“アラブの春”にも言えます。アラブの春は独裁政権に抵抗する勢力が急激に拡大、ドミノ式に民主化革命を成し遂げていきました。しかし抵抗勢力自体が明確な新政府のビジョンを持っていなかったがために政権が安定せず、エジプトで武力衝突が頻発しているように、わずか1年ほどで民主化政権がくずれていっています。

※詳細は“【国際】エジプトでデモ隊衝突・・・アラブの春は失敗だったのか?”をご参照ください。

 

ウィキリークスのような抵抗勢力の出現は、与党の暴走をとめる仕組みとして非常に有効です。しかし一方で、抵抗勢力自身の暴走を監視することも必要です。

 

 

【ニュースソース】

ウィキリークス党立ち上げへ アサンジュ氏、豪で出馬
asahi.com

ウィキリークス代表 豪選挙へ
NHK

アサンジ氏、豪上院選に出馬へ
大分合同新聞

豪上院選に出馬へ アサンジ氏、政党設立
MSN産経ニュース