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【経済】消費税増税は本当に実施されるのか?4〜6月期GDP速報を受け反応さまざま

来年の2014年4月に実施予定の消費税増税ですが、ここへきて増税が本当に実施されるのか、議論が持ち上がっています。

内閣府は12日、今年の4〜6月期の国内総生産(GDP)の一次速報を発表しました。それによると、物価変動などの影響を除いた実質GDP成長率が年率換算でプラス2.6%。3四半期連続でプラスとなりました。プラス成長は予想されていたことですが、民間のシンクタンクなどによると3%の成長を見込んでいました。市場予測よりも低い成長率だったことが、今回の増税実施の可否に影響を与えそうです。

というのも、消費税増税の実施には「景気条項」という条件が付け加えられているため。一定の経済成長が確認されれば増税は実施しますが、それほど景気が好転していなければ増税は実施しませんよ、という条件です。消費税法の附則18条には以下のように規定されています。

 

第十八条  消費税率の引上げに当たっては、経済状況を好転させることを条件として実施するため、物価が持続的に下落する状況からの脱却及び経済の活性化に向けて、平成二十三年度から平成三十二年度までの平均において名目の経済成長率で三パーセント程度かつ実質の経済成長率で二パーセント程度を目指した望ましい経済成長の在り方に早期に近づけるための総合的な施策の実施その他の必要な措置を講ずる。

(法令データ提供システム“消費税法”)

 

附則18条、いわゆる「景気条項」によると、名目成長率が3%、実質成長率が2%であることが消費税増税実施の主な目安となっています。今回の内閣府の発表では、年率換算で実質GDPが2.6%成長ですから、景気条項の基準はクリアしていることになります。

 

ところが、この実質GDP成長率の内訳を見ると、本当にGDPが成長しているのかどうか、に疑問符がつきます。

 

実質GDPは内需が0.5%分、外需が0.2%分の押し上げる要因になったといい、内需主導のプラス成長だったことが鮮明になった。ところが、その内訳をみると、住宅投資も設備投資もマイナス。個人消費が0.8%増えたものの、最も大きく伸びたのは公共投資の1.8%増だった。

(SankeiBiz)

GDPが3四半期連続でプラス成長を維持したことを評価するよりも、むしろ設備投資や住宅投資のマイナスをみて、慎重な姿勢をとったという印象だ。消費増税による景気の腰折れはあってはならない、と強く警告を発している。

(WEDGE Infinity)

 

このように、実質GDPに大きく貢献しているのは公共投資で、設備投資や住宅投資はむしろマイナスになっています。政府の財政出動の効果は出ていますが、それが企業活動の成長には効果がいまいち出ていない、というところが実際でしょうか。そうなると、消費税増税は経済成長が不十分なまま行われることになり、経済への悪影響が懸念されます。

ただ、今後の社会保障費の急激な増大を勘案すると、将来に大きなツケをまわすことにもなりかねません。

 

財務省をはじめ増税派が強調するのは、日本の借金財政を考えると、もはや増税を見送る余裕などないということだ。「もし今回の増税を先送りする場合、次の政治的な合意に至るまで何年が必要となるのか」と小黒一正・法政大学准教授も指摘する。

(nikkei BPnet)

 

このように、日本の財政は逼迫しており、今増税しないとこの先の財政が非常に厳しくなる、と財務省は見ています。もちろん、財政逼迫論には賛否があり、具体的にどのような対策をとるべきか、についても議論がさまざまあります。こうした財務省の反応には「財務省は増税ありきで議論を進めているからこういう反応になるのだ」という批判ももちろんあるようです。

 

これに対し、興味深い視点から議論されていらっしゃる方がおられます。日経新聞が8月10日付の朝刊で国債や借入金などの「国の借金」が1000兆円を突破し、国民ひとりあたりに換算すると約792万円の借金を抱えていることになる、という記事を掲載しました。その記事を次のように批判しています。

 

よく知られているように、ここでいう国、つまり政府の債務は、国債などの形で発行されています。その国債などを買っているのは市中の銀行など金融機関で、その原資は家計や企業からの預貯金です。 国の借金を”国民1人あたり”、というのはそもそも失礼な話で、国民は国にカネを貸している立場です。

もっとも、1000兆円の返済を政府から国民が必ず迫られるというのであれば、日経記事もそれなりの意味があります。

しかし、国の債務は個人債務とは異なり、完済する必要がないのです。もっと言えば完済してはならないのが現代金融システムとも言えます。

(シェイブテイル日記“国の債務は返済の必要がないという本質”)

 

池上彰さんの著書「池上彰のお金の学校 」によると、「今の日本銀行は、政府の発行した「発行済み国債の量」によって、お札を発行する量を決めています」としており、そもそも市中のお金の量は国債の量によって決まっている、としています。ですから、単純に国債の発行残高を減らすと市中に出回るマネーの量が減り、結果として経済が減速する、という議論です。

 

現代の金融システムでは、あなたや私が持っている全てのマネーの背景として、必ず同額の債務が存在し、また債務があるからマネーが存在するといった関係があるわけです。

(シェイブテイル日記“国の債務は返済の必要がないという本質”)

 

もちろん、無制限に国債を発行すれば市中に出回るマネーが増えますからインフレを招くことになりますし、マネーの総量を決めているのはあくまで国債の発行残高ですから、それ以外の借入金などはいくら政府といえども返済しなければなりません。ただ、ここでいいたいのは、国債に限っていえば、それを無理に圧縮する必要はない、ということです。

 

9月をすぎれば消費税増税予定の2014年4月まで残り半年になります。政府の方針としては増税の可否については実施の半年前までに判断する、としていますから、間もなく判断がくだされることになるでしょう。政府にはぜひとも、慎重な議論をお願いしたいところです。

 

 

【ニュースソース】

【ビジネスアイコラム】景気は「もう大丈夫」の段階でない
SankeiBiz

消費増税の判断材料 4~6月期GDP統計 新聞各紙で異なる論調
WEDGE Infinity

まだ万全ではない日本経済、消費増税判断なら需要の反動を抑える政策も
nikkei BPnet

消費税は上げるべき? 「不景気になるから反対」VS「債券市場が混乱するから賛成」
ニュースフィア

消費増税延期はあるのか――注目の「景気条項」とは
THE PAGE