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【国際】中国が一人っ子政策見直し検討へ、政策大転換は実現するか?

中国紙の二十一世紀経済報道は1979年から続いている人口抑制政策「一人っ子政策」の緩和を検討している、と政府関係者の話として伝えました。その後、新華社通信も政府高官が一人っ子政策の改善を検討していることを認めたことを報じています。政策転換が実現すれば、数十年ぶりに政府方針が大転換することになります。

 

中国は貧困緩和と人口抑制のため1970年代後半に一人っ子政策を導入、違反すれば罰金を科してきた。政府研究員らは昨年、高齢化と労働力不足に対処するため、できるだけ早急に同政策を緩和するよう求めていた。

ブルームバーグ

中国では一人っ子政策に対する不満から様々な問題や事件が多発しており、同政策の撤廃を望む国民が多数いるとされているほか、労働人口の急減速も問題視されている。また同政策によって、中国は日本にも匹敵するような急速な少子高齢化が進み、将来の社会福祉の不安も増大している。

財経新聞

 

各紙が報じているように、もともと貧困緩和と人口抑制のために始まった政策ですが、それが現在になって貧困や格差を産み出し、日本以上の少子高齢化を進行させる要因になっている、として問題になっていました。

 

一人っ子政策が産み出した問題点は主に以下の5つです。

  1. 罰金逃れのため戸籍登録していない子供が増え、教育や医療などの行政サービスを受けられなくなっている
  2. 富裕層は罰金と引き換えに第二子以降を生んでおり、経済格差が拡大している
  3. 第二子以降出産の罰金が行政部門の財源となっており、既得権益による政治腐敗が蔓延している
  4. 肉体労働を手伝ってくれる男子の出産を望むため、若年層の男女比率が偏るようになり、結婚できない男性が急増している
  5. 甘やかされて育った子供たちが「家事ができない」「徴兵された際の訓練に耐えられない」など精神的・肉体的に弱くなってきている

Wikipedia一人っ子政策”よりまとめた

 

その他、一人っ子政策は漢民族とそれに次いで人口の多いチワン族以外の小数民族には適用されないため、逆に人口が増える結果となっている、との見方もあります。こうした問題を鑑み、地方や農村などではすでに規制緩和が進んでいました。

 

中国では地方都市や農村単位で様々な例外を設けるなど、段階的に第2子の出産に対する規制を緩和して来た。2011年現在では河南省を除くほとんどの地域で規制は緩和されていたが、同年11月30日に、河南省でも夫婦が共に一人っ子であるか、または農村戸籍の夫婦で第1子が女児であった場合に第2子の出産を認める様に条例改正案を提出し可決された。これにより、条件付きではあるが中国全土で第2子が認められることになった。しかし、戸籍謄本に載せる習慣が強く根付いていないこと、もしくは、農村の夫婦が自発的申告をしない(戸籍事実の隠蔽/隠匿)ため、社会的な地位/身分を持たない子供らが存在し、『黒胚』(上記の「黒孩子」(ヘイハイズ)に同じ)として位置づけされており、規制緩和の裏にはそういった問題も根深くあるとされる。

Wikipedia一人っ子政策”)

 

こうした動きに対し、「一人っ子政策緩和は過去何度も議論されてきたことで、今回の報道もその蒸し返しにすぎず、改革ができるとはおもえない」という見解を示す向きもあります。

 

実は「単独二胎」は今回、初めて提起された話ではない。2010年1月に国家人口計画生育委員会が発表した「国家人口発展"第12期5カ年計画"思考の道」に単独二胎の試行地域策定が盛り込まれていた。2010年に一度提起され、その後音沙汰がない「やるやる詐欺」に陥っていた一人っ子政策改革が、再び推進されるのではないか。新華網記事はそうした期待を抱かせるものとなった。

(KINBRICKS NOW“進行する少子高齢化、限界を迎えた一人っ子政策がそれでも改革できない理由―中国”)

 

このように、一人っ子政策緩和は過去何度も蒸し返されてきた話だというのです。一方ですでに地方や農村では実質的に緩和が進んでいる事実もあり、また都市部では女性の高学歴化が進んでおり、一人っ子政策の緩和自体が少子化に歯止めをかけることにはならないのではないか、とも指摘されています。

また、第二子以降の出産による罰金が行政の大きな財源になっている問題を受け、

 

1つの見方がいわゆる「抵抗勢力」。計画生育部局は各村々にまで人員を配している巨大権力機構であり、その権力を削るような改革はなかなかできないという代物。中国鉄道部はトップの失脚という大事件を経て解体されたが、同様の政治的大事件がなければ手を付けられないのかもしれない。

(KINBRICKS NOW“進行する少子高齢化、限界を迎えた一人っ子政策がそれでも改革できない理由―中国”)

 

と一人っ子政策を管理している計画生育部局自体が一人っ子政策緩和の抵抗勢力になっている、としています。行政側自体が政策転換の抵抗勢力になるとしたら、そうそう政策はくつがえせないでしょう。これも一人っ子政策そのものの弊害であると言えます。

 

これだけの問題をはらむ一人っ子政策ですが、そもそもなぜ実施されたのでしょうか?デメリットばかりが取りざたされていますが、実施されたのにはそれなりの理由があるはずです。

 

すこし歴史を振り返ってみましょう。

一人っ子政策が実施されたのは1979年。当時の中国の最高指導者は鄧小平氏でした。それまでの最高指導者は毛沢東です。毛沢東といえば文化大革命で中国の文化や経済を破壊しつくし、中国全体を疲弊させたことで悪名高い人物です。毛沢東失脚後の1977年、鄧小平は権力を掌握し、毛沢東文化大革命で疲弊しきった中国の再建に乗り出します。改革開放路線として、完全平等だった中国の社会主義経済に市場主義経済を一部取り込むとともに、国の基礎である工業、農業、国防、科学技術の4分野を早急に近代化させる「四つの近代化」を具体的に実行に移します。

「四つの近代化」のひとつである科学技術の発展には教育の再建が不可欠。教育に力を入れるためには、出産数を減らして家庭での子供ひとり当たりの教育費を拡大することが手っ取り早いでしょう。また、子供ひとりであれば子育てがはやくおわるため、女性が社会復帰できる時期も早くなります。

爆発的に増える人口を抑制し、貧困拡大をおさえこむ、という主目的に加えて、当時の時代背景を考えると国家再建の意図もあったのだろうと考えられます。

 

一人っ子政策の開始から34年になります。一人っ子政策のもとで生まれた子供たちはすでに30歳以上になっており、本来であれば経済活動を担う重要な位置にいるはずです。ところがそうした層が一人っ子政策のために数を抑制されてしまっており、中国経済に大きな打撃を与えることになるでしょう。仮に今一人っ子政策を緩和してもその効果が現れるのは数十年先。すでに失速しつつある中国経済が果たしてそれだけ持ちこたえられるでしょうか。今後の中国の動きに注目です。

 

 

【ニュースソース】

中国の一人っ子政策撤廃は世紀の政策転換

財経新聞

2人目出産 緩和を検討 中国紙報道

東京新聞

中国高官「一人っ子政策の改善措置研究している」=新華社

ウォール・ストリート・ジャーナル日本版

中国が一人っ子政策見直しへ、2人目の基準緩和検討-新華社

ブルームバーグ

 

 

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