【ビジネス】NECがビッグローブを売却
数日前のニュースですが、取り上げてみたいと思います。
NECがインターネットプロバイダ子会社のNECビッグローブを売却することが10日、明らかになりました。11月にも入札を行う予定、としています。パソコン事業の事実上の売却、スマートフォン事業からの撤退など、一般消費者向け事業から次々と手を引くなか、プロバイダ事業から手を引くことでさらにBtoBビジネスに特化していく動きと見られます。
NECビッグローブはパソコン事業やスマホ事業のように赤字事業ではありませんでした。
NEC本体から分社化した際に発表した「NECビッグローブ」の売上高は約600億円(2005年3月期)。それが直近の2013年3月期は807億円に上昇している。決算公告によれば営業利益率も3-4%台で推移。高収益ではないものの安定的に数十億円の小ガネを稼げる事業ではあった。
(盗用経済オンライン)
とはいえ、スマートフォンやタブレット端末が急速に普及するなか、プロバイダ事業が先細りしていくのは目に見えています。その流れに対応するため、NECビッグローブも音声通話とメール機能を制限し、インターネット接続端末としての機能を充実させた「ほぼスマホ」を月額2980円という業界でもかなりの低価格で提供しましたが、大きく加入者を伸ばすことは出来ませんでした。
※当方、iPadのWiFi版とWillcomのWiFi接続と音声通話可能なPHSを利用していますが、この組み合わせがすこぶる便利です。
このようなながれもあり、大きく赤字を出す前に事業の売却を決定したのでしょう。
NECはもともと、電話などの通信機器が専門の会社でした。第二次世界大戦の間は陸軍の無線機を一手に引き受けるなど、その技術にも定評があったとされています。戦後は半導体事業などで勢いを伸ばし、人工衛星の製造にも成功しています。小惑星からサンプルを持ち帰ってきたことで大きく話題となった小惑星探査機「はやぶさ」もNECが開発したものです。
1982年にはPC-9800シリーズというパソコンで市場を席巻、パソコンと言えばNECといわれるまでになりました。コンピュータ関連の技術を伸ばし、2002年には世界のスーパーコンピュータランキングTOP500でNECが開発した「地球シミュレータ」がトップを獲得しています。
しかしその後、パソコン技術は陳腐化し、ヒューレットパッカードやレノボといった海外の低価格製品に押されるようになってきました。もともとが陸軍のお抱えだったこともあって殿様体質がぬけなかったのか、時流にのることができずに赤字経営が続き、事業再編とあいなったわけです。
技術は非常に高い一方で時流に合った製品を産み出すことができずに苦しむ、という日本の製造業の典型的な例といえるでしょう。
※NECの最大のライバルである富士通は高齢者にターゲットをしぼった携帯電話「らくらくホン」やそのスマホ版「らくらくスマホ」で売上を伸ばしました。また、富士通はスーパーコンピュータ「京」で世界一位もとっています。「京」はNECのスパコンとは設計の根本が大きく違うもので、高速かつ安価なマシンでした。富士通はこのような思い切った発想転換が可能でしたが、NECではそれがうまく機能しなかったようです。
巨大企業のNECが事業を縮小、大きく様変わりしようとしています。何年か前には東芝の携帯電話事業を富士通が買収、パナソニックはテレビ事業から撤退、日立はHDD事業を売却。経営多角化から専門特化の時代に入っています。米国のIBMのように、パソコンから完全に手を引いて大型コンピュータとソフトウェアに特化するような会社も出てきています。
技術革新が次々と起こるパソコン、携帯電話、スマートフォン産業。今は隆盛を誇っている企業も数年後にはどうなっているか分からない世界です。今回のNECの判断がうまくいけば、またあらたな形で復活できるでしょう。しかしうまくいかなかった場合はNECが消滅する、ということも十分考えられます。
【ニュースソース】
NECが傘下のISP「NECビッグローブ」を売却へ
GIGAZINE
NEC、ビッグローブ売却−来月中にも1次入札、ニフティ参加意向
日刊工業新聞
NEC、ビッグローブ売却へ
読売新聞