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【ビジネス】サムスン製品の輸入差し止め、米国が発動承認

米国の通商代表部(USTR)は8日、米アップルが特許侵害を理由に韓国サムスン電子製品の輸入差し止めを求めていた件について、差し止めを指示した米国際貿易委員会(ITC)の決定を有効とし、輸入および販売差し止めを承認しました。この決定によって、米国内ではこれまで販売されていたサムスン電子のスマートフォンやタブレット端末の一部が販売停止になる可能性もあるそうです。

ただ、今回の措置で差し止められるのは旧型機種が中心で、サムスンの業績に大きな影響を及ぼすものではない、との見方もあるようです。一方で特許を巡って2011年から激しい争いを繰り広げてきた両社に米国がひとまず「アップルの勝ち」としたことで、今後の法廷闘争に大きな影響を及ぼすことも確実視されています。

 

MM総研のデータによりますと、2012年度通期の国内携帯電話シェアはアップルが25.5%と市場の4分の1をとっている形となっています。ところが世界全体のシェアでみると、IDCのデータによれば2013年1〜3月期のスマートフォンシェアはサムスンが32.7%、アップルが17.3%とアップルがサムスンに大きく水を空けられている状況です。

 

スマートフォン出荷台数のメーカー別ランキングの首位は4期連続で韓国Samsung Electronics。出荷台数で2位の米Appleの約2倍、シェアの差を前期よりさらに9.6ポイント広げた。同社の出荷台数は、2位~5位のメーカーの出荷台数合計をも上回る。

ITmedia世界でのスマートフォン出荷台数、2013年第1四半期に初めて携帯電話を上回る──IDC調べ”)

このように、サムスンスマートフォンは世界市場でみると4期連続でシェアトップを走っており、一方のアップルはシェア2位をキープしているものの、じわじわとシェアを落としています。

 

特許侵害を訴えて提訴する理由は、ある意味で単純です。特定の特許を守ることはもちろんですが、競争者の存在そのものを許さないのです。言葉を換えれば、自らが創造した市場に他者が入り込むと、今までは横綱相撲だったのに、俄然、尻に火がつきます。後発組が先発組を追い越し、母屋を乗っ取るかのような動きは、自ら創造した市場を守るためにも断じて許されません。そのための具体的な武器として知的財産が活用されるというわけです。

ダイヤモンドオンライン“アップル vs サムスンの知財紛争は

製品シェアが逆転した時に発火した ”)

アップルとサムスンの特許争いが始まったのは2011年。ちょうどそのとき、アップルのスマートフォン市場シェアはサムスンに逆転されました。それを契機にアップルは特許侵害を理由にサムスンを提訴しています。

 

アップルとサムスンとの間で特許紛争が勃発したのは2011年4月のことでした。まずアップルが、「サムスンが特許を侵害している」とアメリカで提訴し、すぐさまサムスンが逆提訴します。時をおかずサムスンは、4月に日本とドイツで、さらに6月にはイギリスとイタリアで提訴します。アップルも負けじと6月には韓国で提訴し、9月には日本で逆提訴するなどして、両社の特許紛争は、世界を舞台にして争われる「多重的世界司法闘争」へと拡大しました。

ダイヤモンドオンライン“アップル vs サムスンの知財紛争は

製品シェアが逆転した時に発火した ”)

特許争いは米国、ドイツ、イギリス、イタリア、韓国、日本と複数の国で提訴合戦が行われ、激しい争いが各国で繰り広げられています。この背景には、すでに述べたようなアップルの危機感がみてとれます。

 

日本ではアップル製品の勢いが強くサムスン製品があまり売れていない、という状況にあるため、アップルがサムスンに対して危機感を抱いている、という事態はなかなか想像しにくいかもしれません。

 

韓国メディアは、夏商戦でソニーとサムスンの販売台数に大差がついた理由について、日本がソニーのホームグラウンドであることや、「反韓感情」で韓国企業であるサムスンを敬遠する心理が働いたとの見方を示した。実際に販売店ではツートップではないシャープがサムスンの販売台数を超えることも少なくなかったとし、「品質だけでは超えられない韓国製品に対する警戒心が未だ日本市場にあることを示す事例」と説明。

(YAHOO!ニュース“サムスン、日本で屈辱…ドコモ「スリートップ」から脱落か=韓国”)

以前ドコモが「ツートップ戦略」としてソニーとサムスンスマートフォンを大々的に押し出す販売戦略をとったことがあります。そのとき、ソニー製品はたしかに好調な売れ行きを示しましたが、サムスン製品はソニーの約半分と芳しくない売れ行きでした。「日本国内では反韓感情からサムスン製品が売れない」と分析する向きもあるようです。

このような事情もあって、世界的にもアップルがトップを走っていると思いがちですが、たとえばロシアではアップルからの販売ノルマが苛烈すぎてiPhoneの取り扱いを辞めています。このように、アップルが必ずしも世界中で受け入れられている、というわけではなさそうです。

 

今回の米国内の争いではひとまずアップルに軍配が上がりました。とはいえまだまだ両社の争いは続いていくものと思われます。はたしてどうなっていくのでしょうか。興味深いところです。

 

 

【ニュースソース】

サムスンの輸入差し止め命令が発効 拒否権発動せず
Klug クルーク 

サムスン電子、米政府に輸入禁止命令への拒否権発動求める
ブルームバーグ

旧型サムスン端末の販売差し止め命令、米大統領審査期間の終了迫る
朝日新聞

サムスン電子 製品の米輸入差し止め、USTRが承認
ロイター

米USTR、サムスン製品の輸入差し止め容認
日本経済新聞

サムスン電子の一部製品への米輸入禁止
ブルームバーグ

米政権、サムスン製品に対するITCの輸入禁止命令を支持
ウォール・ストリート・ジャーナル日本版

サムスン電子製品の米輸入差し止め、通商代表部が承認
ロイター