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【社会】2010年の警視庁国際テロ捜査情報流出事件、時効で立件断念

国際テロに関する警視庁公安部の内部資料が流出した2010年の事件について、同庁は偽計業務妨害の疑いで操作を進めていましたが捜査は難航、今月29日に時効を迎えるにあたって立件を断念し、容疑者不詳のまま書類送検する方針を固めました。捜査関係者への取材で明らかになったそうです。

 

事件の概要をWikipediaから引用します。

 

公式文書はほぼすべてが国際テロ捜査に関する内容で、テロ関連の捜査対象者又は捜査協力者とされた在日イスラム教徒の個人情報(国籍、氏名、生年月日、旅券番号、職業、出生地、住所、電話番号、家族、出入国歴、出入りモスク)、中東のイスラム国の在日大使館員の口座記録、特定のモスクの出入り者総数などが記録されており、個人情報が記載された人は延べ600人以上に及んでいる。また「北海道洞爺湖サミット警備の体制」「捜査協力者に育成するまでの心得」「在日米軍の爆発物処理研修」「米空軍特別捜査局の機密情報」など日本警察や米軍の手の内に当たる情報も入っていた。

Wikipedia警視庁国際テロ捜査情報流出事件”)

 

流出したのは国際テロに関する内容で、捜査協力者や捜査対象者の個人情報も含まれていました。このデータが事件発生の1ヶ月後にあたる2010年11月25日に警察批判本などを出版している第三書館から「流出『公安テロ情報』全データ」として出版、物議をかもしました。出版の数日後に個人名が記載された人物から販売差し止め要求が東京地検に訴えられ、現在は個人情報を全面的に削除した形で再販しましたが、その後、在日イスラム教徒らからの損害賠償と出版禁止の訴えを受け、東京地検は出版禁止を命じています。

 

11月27日現在で21ヵ国の1万286人が入手したと報道されている。過去のネットで機密情報が漏洩した事件と異なり、PC利用者自身の個人情報が漏洩していないため、警視庁の関係者から「内部の権力闘争で意図的に流された可能性もある」との指摘もなされているという。

Wikipedia警視庁国際テロ捜査情報流出事件”)

 

このような指摘もあり、国家の安全に関わる重要機密が別の意図で利用されてしまった可能性があるとされています。

 

この事件をみて、先日話題になったいわゆる「秘密保全法」を思い出しました。今回の事件はあくまで「偽計業務妨害」の疑いでの捜査です。偽計業務妨害とは「虚偽の風説を流布し、又は偽計を用いて、人の業務を妨害すること」であり、情報流出そのものが罪に問われているのではなく、情報流出の結果、この事件では公安部の捜査業務等に支障が出た、という名目で捜査の手が入ったと思われます。

一方、仮に秘密保全法が成立した場合、この事件は国際テロに関する情報の流出ですから、国家安全保障に関わる機密の漏洩であるとして、情報流出そのものを罪に問うことができるようになります。

 

秘密保全法に対する反発は非常に強かったようで、先月に募集されたパブリックコメントでは寄せられた意見約9万件のうち8割が反対意見だったとも報道されています。そのような状況を鑑みてこのニュースをあらためて考えてみると、秘密保全法に安易に反対するのはどうか、と考えてしまいます。

 

 

【ニュースソース】

テロ文書流出事件捜査断念へ 問われる情報管理
NHK

国際テロ資料流出事件、警視庁が事実上“立件断念”
毎日放送

国際テロ捜査情報ネット流出、立件断念 警視庁、容疑者不詳で書類送検へ
47NEWS

公安内部資料、ネット流出の立件断念…警視庁
読売新聞