【政治】消費税8%決定へ、復興法人税の前倒し実施で景気対策
政府が2014年4月から予定通りに消費税を5%から8%に引き上げることを10月1日に発表することが9月30日に明らかになりました。あわせて6兆円規模の景気対策を打つことも発表する予定です。
経済対策として、企業の継続的な賃上げを支援する所得拡大税制、設備投資を促進する投資減税に加え、2014年末に廃止予定だった復興法人税を2013年末に前倒しすることを検討しています。企業の成長を促しそれを賃金に反映させて増税分と相殺する、という考え方のようです。
また、個人向けには住宅ローン減税と低所得者向けの現金支給など、消費税増税のショックを和らげる政策を議論しています。
【復興特別法人税】
- 2013年度末に1年前倒しで廃止することを検討
- 設備投資拡大から賃金上昇、消費拡大の好循環につなげる
- 廃止分の不足は13年度補正予算で穴埋めする方向
- 復興特別所得税は維持する
【賃上げ】
- 経済産業省などで主要企業の賃上げ動向を調査
- 雇用者所得を増やすための税制を拡充。13、14年度中に給与総額2%以上(12年度比)引き上げ企業に減税措置。15年度は3%以上(同)の企業が対象
【投資関連税制】
- 生産性の高い新規設備導入で16年3月末まで費用の全額償却か最低3%の税額控除
- 研究開発促進のため、試験研究費の増加分の最大3割を税額控除
(SankeiBiz)
SsnkeiBizがおおまかに景気対策をまとめています。これらの政策によって増税ショックを和らげ、回復し始めていると思われる日本経済に水をささないようにする方針のようです。
閣議決定案では、経済対策により「デフレ脱却と経済再生に向けた道筋を確かなものとする」と説明。公共事業や雇用対策など5兆円規模の13年度補正予算で増税の影響を和らげ、経済の底上げや成長軌道への早期復帰を目指す。
(中国新聞)
おそらく、これらの経済政策は一定期間が経過した後、解除されるものと思われます。
消費税増税によって得られる税収増と今回行う予定の景気対策分の支出のバランスはどうでしょうか。試算によると、消費税を1%引き上げると約2兆円の税収増になる、と言われています。ということは、消費税を8%に引き上げることで約6兆円の税収増になると見込まれています。それに対して6兆円規模の経済対策を行うのですから、単純にみると差し引き0になる計算です。
ただ、ここで単純に「差し引き0になるのならやる必要がないのではないか」と考えるのは早計です。消費税を増税して他の部分を引き下げる、というのは税収構造を大きく変える、ということを意味します。
所得税や法人税、所得に応じて変動する住民税などは景気に左右されやすい、というデメリットがあります。一方、消費税は5%に引き上げられて以降、約10兆円と税収が安定しています。つまり、政府としてはまず安定した税収を確保することが目的であり、今回打ち出す6兆円規模の経済対策も永続的なものではない、という点に注目すべきです。
復興法人税を前倒しで廃止する、ということは企業の負担を軽くする、ということです。ここがポイントで、法人税を一部引き下げることでそれが社員の賃金増に反映され、結果的に所得増につながることを政府は期待しています。そのため、わざわざ賃金を継続的に上げる企業に対して優遇税制を設定しているわけです。
つまり、市中に出回るマネーの量を増やして消費意欲を高め、そこから安定的な税収を確保する、という狙いが見えてきます。
※復興法人税の廃止によって震災復刻のための財源が減る可能性がありますが、復興特別税は法人税のほか、所得税と住民税にも上乗せされています。ですから、復興のための財源が消滅するわけではありません。
ただ、これはうまく機能しないと悲惨なことになります。廃止された復興法人税分を社員の賃金に還元せず、会社の内部留保として残してしまうことになれば、一般市民に対して税負担だけがのしかかることになります。そうすれば、消費意欲が減衰し、さらに経済を悪化させることになります。こうならないよう、企業が賃上げをするとより有利になる政策を打つ必要が出てきます。
報道では12月上旬までに経済政策の詳細をまとめ、2013年度補正予算と2014年度予算案に盛り込んでいく予定となっています。安倍首相がどんな精度設計をしてくるのか、注目したいところです。
【ニュースソース】
「復興法人税の前倒し廃止」が目玉、政府で行われている「経済政策」議論の内容とは?【争点:アベノミクス】
ハフィントンポスト
税制改正、脱デフレへ企業動かす 投資や賃上げで減税1兆円
日本経済新聞
経済対策5兆円、年末に補正=安倍首相、1日に消費増税表明
ウォール・ストリート・ジャーナル日本版
減税規模2兆円、与党合意 首相きょう消費増税表明
日本経済新聞
「税制改正大綱」原案明らかに 減税での賃上げ 主要企業検証
SankeiBiz