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【社会】人口水増しで愛知県東浦町前副町長に懲役4ヶ月を求刑

2010年の国勢調査で愛知県東浦町が人口を水増しした事件で、前副町長の荻須英夫被告に対し検察側は6日、懲役4ヶ月を求刑しました。弁護側は無罪を主張しており、10月4日におこなわれる最終弁論で結審する予定です。

 

さて、このニュースをぱっと見たときに

  1. なんで人口を水増しする必要があるの?
  2. いったいどんな罪に問われているの?

のふたつの疑問がわきました。

 

なぜ人口を水増ししたかったのか?

検察側は論告で、市への昇格を熱望していた荻須被告が部下の職員に「人口を増やしてくれないか」などと水増しを指示したと指摘した。

日経新聞

日経が報じているように、荻須被告は市への昇格を熱望していたとのことです。市に昇格するには人口が5万人を超える必要があり、それに足りる人口にするため、303人分を水増ししたとのこと。

町から市になると、自治体としての権限が大きく拡大します。また、町よりも市の方が自治体としてのイメージもよく、人も集まりやすい。そうなって人口が増えてくると、地域が活性化し、税収が拡大し、自治体の財政も潤ってくる、という大きなメリットがあります。しかも、東浦町は当時、市制移行条件の人口5万人にあとわずか、という状態でした。

あとすこし待てば十分市制移行できたのに、その「あとすこし」が我慢できなかったのでしょうか。荻須被告は63歳。年齢的にも焦りがあったのではないでしょうか。

 

一方で、人口条件を超えているのに市に意向しない町や村もあります。そうした自治体は「自然」をウリにしているため、あえて市には移行しない、としています。市に移行してしまうと都市的な印象を与えてしまい、せっかく「自然がいっぱい」のイメージで観光客を呼び込んでいるのにそのイメージを台無しにしてしまうからです。

 

このように、自治体にもそれぞれの戦略があるようです。東浦町の場合、市制移行を急ぎすぎたのが裏目に出てしまったようです。

 

いったいどんな容疑に問われているのか?

2010年の国勢調査で愛知県東浦町の人口を水増ししたとして統計法違反の罪に問われた前副町長、荻須(おぎす)英夫被告(63)の論告求刑公判が6日、名古屋地裁(森島聡裁判長)であった。検察側は「国勢調査への信頼を損なわせ悪質」などとして懲役4月を求刑した。10月4日に最終弁論があり、結審する予定。

(毎日新聞)

 

各紙報じているように、被告は「統計法違反」の罪に問われています。統計法とは、

 

統計法(とうけいほう、平成19年5月23日法律第53号)は、統計の真実性を確保し、統計調査の重複を除き、統計の体系を整備し、及び統計制度の改善発達を図ることを目的とする日本の法律である。

Wikipedia統計法”)

 

Wikipediaにあるように、政府が行う統計調査に関して、その信憑性を担保するための法律です。例えば国勢調査や雇用統計などのように、その結果が社会的インパクトを与えうる調査はその正確さが重要になってきます。その正確さをゆがめるような行為は社会的なインパクトを意図的に操作する、という意味で罪に問われるのです。

 

以前、中国の貿易統計で水増し事件がありました。それも、海外の投資家を意図的に呼び込もうとするもので、事件が発覚したとき、中国の統計は信用ならないとして海外の投資家が離れていきました。

中国の例は極端ですが、統計結果の意図的な操作は発覚したときにデメリットをもたらします。そうした自体を防ぐためにも、統計法は重要なのです。

 

 

荻須被告の気持ちも分からないではありません。が、功を焦って信用を失っては元も子もない、という良い実例でした。

 

 

【ニュースソース】

国勢調査で人口水増し、前副町長に懲役4月求刑
読売新聞

人口水増し、東浦町前副町長に懲役4月求刑 名古屋地裁
日本経済新聞

前副町長に懲役4月求刑=東浦町人口水増し—名古屋地裁
ウォール・ストリート・ジャーナル日本版

人口水増し:愛知・東浦町の前副町長に懲役4月求刑
毎日新聞

東浦前副町長に懲役4カ月求刑 人口水増し
朝日新聞

人口水増しで前副町長に懲役4か月求刑(愛知県)
日テレNEWS24