ニュースを比較してみるブログ

世にあふれるニュースを報道のされ方を比較、掘り下げていきます。国際、政治、経済を主に取り上げています。やや右寄りの傾向あり。

【国際】仏大統領の事実婚パートナーがシリアを非難「母親として許せない」

あまり大きくは取り上げられていませんが、ちょっと気になるニュースなのでここで取り上げたいと思います。

オランド仏大統領の事実婚のパートナー、バレリー・トリエルバイレール氏が1日、フランスの民放テレビ「M6」でシリアのアサド政権による化学兵器使用疑惑について「母親として許せない」と非難、大統領のシリア攻撃を支持しました。

 

オランド仏大統領の事実婚のパートナー、バレリー・トリエルバイレールさん(48)は1日、民放テレビ「M6」でシリアのアサド政権による化学兵器使用疑惑について「母親として受け入れられない」と述べ、軍事攻撃の必要性を訴える大統領を側面支援した。

バレリーさんは、「数十人の子供の遺体が重なり合っているのを(映像で)見て、眠れなかった。許せない」と訴えて、アサド政権を批判した。

世論調査では仏国民の64%が仏の介入参加に反対しているが、オランド大統領は米国と共に軍事攻撃に参加する方針を維持している。バレリーさんには、離婚した夫との間に3人の息子がいる。

(読売新聞)

 

各紙報道によると、フランスの世論調査ではシリアへの軍事介入に64%が反対。同じくシリアへの攻撃を行う予定の米国でも半数以上が軍事介入に反対しています。もともと軍事介入する予定だった英国では、議会での反対多数でシリア攻撃を断念しました。このように、世論はシリア攻撃に反対する中、大統領のパートナーが「母親として許せない」と感情に訴える支持を表明するということは、やはりなんとかして世論の支持をとりつけ、どうにかシリア攻撃を実現させたいとの思惑が透けてみえます。

 

トリエルバイエール氏の主張はあくまで感情的なもので、シリア政府が実際に化学兵器を使ったか否か、という部分には触れられていません。たしかに化学兵器の使用は道義的に許されるものではありませんが、「誰が使用したのか?」が明確でない以上、単純にアサド政権を化学兵器使用で非難することはできないはずです。

 

では、フランスはなぜここまでしてシリアへの軍事介入をやりたいと思うのでしょうか。

すぐ思いつく所では、(1)フランスの国際社会でのメンツのため、(2)シリアはかつてフランス領であったため、の二つです。

 

(1)第二次世界大戦で米国とともに連合国軍としてナチスドイツと戦ったフランスはその後、国連の常任理事国として一定の存在感を国際社会に示しています。そのため、国際法に違反すると言われる化学兵器の使用をみすみす見逃したのでは、国際社会のなかでメンツがたたない、というものです。

とはいえ、同じく常任理事国のイギリスがシリアへの軍事介入を中止したこともあり、この理由は説得力にかけます。

ただ、一方で国連の常任理事国であるロシアと中国はシリアへの軍事介入には反対の立場をとっており、国連決議にかけられた場合、拒否権を発動する可能性があります。ここにはかつての米ソ冷戦の敵対構図が復活しているようにも見えてきます。とするならば、シリア攻撃は表の理由で、実際にやりたいことはロシアと中国に対するけん制である、と考えることもできます。

 

(2)シリアは第一次世界大戦後の1920年から1946年の独立およびフランス軍撤退まで、フランスによって委任統治されていました。独立から数十年がたったとはいえ、かつての統治領ですから、混乱に乗じてなにかしら影響力を行使したい、という思惑があるのかもしれません。

 

もちろん、他に理由はあるのかもしれません。

ただ、フランスは世界第三位の核兵器保有国です。抑止力としてであり実際に兵器として使用することはない、とされていますが、核兵器保有国が化学兵器を使用したことを非難することに、どこか違和感を覚えます。

8月30日に“【国際】「シリアの化学兵器使用は国際法違反、では米国による原爆投下は?」”で取り上げたように、シリアの化学兵器使用はたしかに国際法にてらして問題がありますが、米国による原爆投下、その後の核軍拡の状況を鑑みると、シリアに対する非難はどこか一方的で不自然なようにも感じられてきます。

 

 

【ニュースソース】

母親として化学兵器使用許せない…仏大統領夫人
読売新聞