ニュースを比較してみるブログ

世にあふれるニュースを報道のされ方を比較、掘り下げていきます。国際、政治、経済を主に取り上げています。やや右寄りの傾向あり。

【国際】米大統領がシリア軍事介入を決断、議会の承認を求める

米オバマ大統領は日本時間の1日未明、シリアへの軍事介入を決断したとする声明を発表しました。シリア政府が首都ダマスカス近郊で化学兵器を使用したことに対する人道的な立場から、としています。オバマ大統領は議会に軍事介入の承認を求める方針。米国では通常、軍事攻撃は議会の承認を経ることなく行うことができます。議会の承認を求めるということは、より広い支持を得る必要がある、と考えているためでしょうか。

 

米テレビ局のNBCテレビが行った世論調査ではシリアへの軍事介入に賛成が42%、反対が50%と反対とする立場が上回っています。また、軍事介入によってシリア情勢は改善すると思うか、という質問に対し、「改善する」が27%、「改善しない」が41%と軍事介入の意義について疑問がもたれています。

NBCはどちらかというと民主党寄り、オバマ大統領支持のメディアです。そのメディアの世論調査がオバマ大統領の政策を支持しない、という結果を出したということは、今回のシリアへの軍事介入が支持を受けていない、ということが分かります。

 

昨日、“【国際】シリア化学兵器使用に関する国連調査団、日程を繰り上げ調査終了”で国連調査団が日程を繰り上げて調査を終了し、シリアを出国して報告を急ぐとのニュースを取り上げました。オバマ大統領の決断は国連調査団の帰国も待たない格好となり、国連調査団による調査結果のいかんに関わらずシリアへ軍事介入するつもりであったことが浮き彫りとなっています。事実、米国議会は独自にシリアが化学兵器を使用していたと断定する声明を発表しており、国連の動きとは違う独自の動きをとっています。

 

オバマ政権は「エジプトのモルシ政権崩壊」という事態を待っていたフシがあります。仮にシリアが西側の攻撃への報復として、本格的にイスラエルへの侵攻を行った場合、エジプトに「反イスラエル」のモルシ政権が存在するようですと、イスラエルの「挟撃される恐怖心」が暴走して大変ことになる危険があったわけで、その要素が軽減されているということが「今」まで待っていたことの理由だと考えられます。

ニューズウィーク日本版“アメリカはどうしてシリア攻撃に踏み切ろうとしているのか?”)

 

米国はシリアを攻撃したくてうずうずしていたのではないかとみられています。シリアはパレスチナ(=イスラエル)の隣国に位置し、イスラエルを支持する米国にとっては重要な国だからです。また、ニューズウィークにあるように、親イスラムであったエジプトのモルシ政権が倒れた、というタイミングもあります。イスラエルはユダヤ人の国であり、イスラム教徒とは敵対しています。近隣であるエジプトで親イスラム政権が立ち上がっているとなると、敵を増やすことになり軍事行動も起こしにくくなります。

 

ではなぜ米国がここまでイスラエルにこだわるのでしょうか。多くの方がすでにご存知かと思いますが、米国ではユダヤ人のロビイストが強力な力をもっているから、とされています。

 

アメリカは1948年イスラエル建国後即座に承認した。当時のトルーマン大統領は選挙で選ばれた大統領ではなく選挙に不安を抱いていた。トルーマン大統領はアメリカ国内のユダヤ人の支持を求めてイスラエルを承認した。アメリカでは国連でのイスラエル非難決議が議題にあがるなどイスラエルの危機の時には、イスラエル支持を訴えるデモがいつも見られる。

(zames_makiの日記“なぜアメリカはイスラエルを支持するのか”)

 

放送大学で教授をやっておられる国際政治学が専門の高橋和夫さんの抗議をもとに記事を書かれています。非常に興味深いのでぜひご一読ください。

そのなかで上記のように、米国の議員は選挙を戦うためにユダヤ人ロビイストを活用しています。ユダヤ人ロビイストはイスラエルを国家として承認する立場ですから、自然とイスラエルを支持する政策に寄っていきます。また、上記ブログにはさらにキリスト教原理主義者の存在にも言及しています。

 

アメリカでイスラエルを支持する存在にキリスト教原理主義がある。彼らは特定の宗派ではない、一般にキリスト教右派、キリスト教保守主義とも呼ばれる。

(中略)

聖書を信じる事から。彼らは今のイスラエルを聖書の中の記述と重ねあわせて見ており、イスラエル国家の行動を聖書の実現と見なして、その支持をアメリカ議会に働きかけている。

(zames_makiの日記“なぜアメリカはイスラエルを支持するのか”)

 

原始キリスト教はユダヤ教から発したものでもありますから、その思想に共通する部分もみられます。その意味で、キリスト教原理主義者がイスラエル支持を表明するのもあながちおかしい話ではありません。もちろん、ユダヤ人は政治的な観点から、キリスト教原理主義者は宗教的な観点から、という違いはありますが。

 

このように、さまざまな要因を検討していくと、オバマ大統領のシリア攻撃決断は化学兵器の使用を口実としたいだけなのではないか、という推測が可能になります。しかし現実には世論はこの政策を支持していません。

 

はたして、この決断はどのような結果をもたらすでしょうか。

 

 

【ニュースソース】

シリアへの軍事介入で米世論 反対50%、賛成42%
テレビ朝日

シリア攻撃、決断秒読み 米、国内手続きほぼ終了
中国新聞

オバマ氏、シリア攻撃を最終検討 1日、下院に説明予定
朝日新聞

米、シリア軍拠点の攻撃想定 介入へ近く最終決断か
日本経済新聞

オバマ米大統領 シリアへの軍事介入決断
MSN産経ニュース

シリア攻撃:米大統領、武力行使決断 議会承認求める
毎日新聞

米大統領、シリア攻撃「議会承認求める」 9日以降に
日本経済新聞

米大統領、シリア攻撃を決断…「議会承認求める」
読売新聞

米、シリア攻撃の決断秒読み 介入の国内手順ほぼ終了
秋田魁新報

米大統領、軍事行動を決断=対シリアで議会承認求める
時事通信

オバマ氏「軍事行動 9日以降議会承認求める」
NHK

米、シリア攻撃足踏み オバマ氏、議会承認を追求
山陰中央新報

シリア攻撃決断秒読み…米大統領、限定的作戦検討
サンケイスポーツ

米大統領、にじむ不安な胸の内 責任を議会と共有
日本経済新聞

シリアへの軍事介入、オバマ大統領「議会承認後に」
毎日放送

米・オバマ大統領が緊急声明 「シリアへの軍事行動決断」と明言
FNN

米、シリア攻撃足踏み
佐賀新聞

政府 米政権と議会の調整見て検討
NHK

議会に事前承認求める=米大統領、軍事介入決断-シリア化学兵器問題
時事通信

米大統領を支持 英首相 シリア軍事介入
MSN産経ニュース

オバマ大統領「シリアへの軍事攻撃を決断」
読売テレビ

対シリア 米、限定介入準備 駆逐艦5隻に増強
東京新聞