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【政治】消費税増税の集中点検会合はじまる、景気落ち込みに懸念も

政府は26日、60名の有識者から消費税増税に関する意見を広くヒアリングする集中点検会合の第一回目を開催しました。半年後に控える消費税増税実施の可否に関わる会合だけに、その趨勢が注目されています。

会合は総論に加え、経済・金融、国民生活・社会保障、産業、地方・地域経済の5つのテーマで行われます。初回の総論には7名の有識者が参加。経団連米倉弘昌会長ら5名は予定通り増税支持を表明。一方で主婦連合会の山根香織会長は「断固反対」を訴え、元日銀副総裁の岩田一政氏は「(経済へのマイナス影響を緩和するため)1%ずつ増税して最終的に10%にする」ことを提案しています。

今回の会合初日、そもそも集ったメンバーの半数以上が増税支持派である点をふまえ、そもそも人選に問題があるのではないか?という声も聞こえてきます。さらに踏み込んで、「60名もの意見を聞いたら混乱するだけ、“意見を聞いた”というアリバイ作りなのでは?」といった憶測もなされているようです。

 

ここで一度、消費税増税のメリットとデメリットを整理しておきましょう。

 

<メリット>

政府にとってのメリット

  • 金銭的に裕福な人から多く税金をとれる
  • 目的税より税率を低くしても多額に調達できる
  • 国民が無意識で払うものだから一度増税すると不満がでにくい
  • 税収の方法が簡便的で広く、短期間で財源を確保できる

一般市民にとってのメリット

  • 公的サービスの質の低下の歯止め

 

<デメリット>

政府にとってのデメリット

  • 景気悪化
  • 財政再建不達成時の国民からの政府への不満

一般市民にとってのデメリット

  • 政府の無駄削減のインセンティブが低下する
  • 逆進性
  • 同じ給料の範囲で支出できる買い物の額が減る

 

大きく考えると、政府にとっては増税によって財源確保がしやすくなり、社会保障や公的サービスに予算をつけやすくなります。それは一般市民にとっても公的サービスの質向上という面でメリットになり得ます。

一方で景気が後退する可能性が高いこと、市民からの不満が噴出し政府の支持率低下が起こること、などの政府側のデメリットもあります。また、一般市民にとっては税負担が増えるため生活が苦しくなる、という最大のデメリットがあります。

政府は財政再建のための財政確保をしたいと思っています。しかし、一般市民にとって大事なのは今日明日の生活、短期的な視点です。ですから、「消費税増税による短期的なデメリットを上回る一般市民にとってのメリット」を提示できなければ、一般市民からひろく賛同を得るのは難しいのではないかと、私個人は思っています。

 

消費税増税は「国の信用」にも関わってきます。一言で言うと「国債の格付け」のこと。このまま財政再建がなされなければ国債の格付けが下がり、国債による資金調達が滞るようになります。その結果、公的サービス(年金、健康保険、公共施設運用、道路整備など)の質が低下します。たとえば窓口で支払う医療費があがる、公共施設が使えなくなる、道路が荒れる、といったことが起こりえます。極端な例をあげると、米国のデトロイトがそのような状態に陥りました。街の3割が空き地になり、解体するお金もないため廃墟になって放置された状態です。治安は悪化して殺人事件の7割が未解決、救急車が到着するのも呼んでから1時間以上先、といった状況。

 

ところが、こういった状況は消費税増税によっても起こりえます。というのも、消費税増税によって消費が冷え込み、企業の売上が下がって法人税の税収が下がるとともに、売上低下で従業員の所得が減り、所得税の税収も下がる、という可能性があるからです。

 

ただ将来の景気への不安は増税を推進する有識者も同じだ。山根氏を除く6人はいずれも増税に伴う景気の落ち込みを和らげるため、「駆け込み需要のあとの対策を万全にすべきだ」(古賀伸明連合会長)と指摘。岩田氏は増税の影響を緩和するため法人税や所得税の減税の実施を求めた。

日経新聞

 

そこで、このように消費税増税による景気後退を防ぐ対策を万全にすべき、という意見が今回の7名のうち6名から出ています。

また、先週の記事になりますが、読売新聞グループ会長の渡辺恒雄氏が政治家に宛てた暑中見舞いで次のような意見を送った、と話題になりました。

 

「なお、年末に向けての政府の最大課題の一つは、消費税の実施時期の問題です」ではじまり、「アベノミクスの失敗は許されません」、「伝統的な財務省の早期財政再建至上主義よりも、異次元の方策があります」とし、「8%を中止し、10%に上げる時に、軽減税率については生活必需品は5%にとどめること」が提案され、「近く小生としても詳細な具体策を報告するつもりです」と結ばれている。

(ダイヤモンド・オンライン“話題を呼ぶ「ナベツネ書簡」 消費税増税は政局化する”)

 

税率をすべての品目で一定にするのではなく、一般市民にとってもっとも影響の大きい生活必需品に限っては5%のままとし、それ以外の税率をあげるべき、という考え方です。一部の品目に軽減税率を適用して低所得者にも配慮する、という方式を採用している国は多くあるようです。しかし、「どこからどこまでを生活必需品とするか」の線引きで議論が紛糾することもありますし、帳簿上の処理が煩雑になる、という手続きの複雑化の問題もあります。私個人としては一部の品目に軽減税率を適用するやり方に賛成なのですが、制度設計に問題があることは否めません。

 

ですから、たとえば消費税増税のかわりに所得税を軽減する、というのも手だろうと考えます。現在の日本で全金融資産のうち8割を60歳以上が保有している、というデータがあります。所得税を軽減する、ということは現役世代に減税の恩恵をもたらし、高齢者世代からの税収を大きくする、という効果が出てきます。世代間格差の解消という意味ではこの方式もアリだろうと思いますが、高齢者層からの反発は大きくなるでしょう。

 

このように、単純な増税だけではうまくいかないのではないか、という意見がさまざまもちあがってきています。26日から6日間の集中会合でどのような結論に達するのか、一般市民の立場から注目したいと思います。

 

 

【ニュースソース】

消費増税へ影響点検 政府、有識者から聞き取り開始
日本経済新聞

消費税率の引き上げ判断…集中点検会合始まる
読売新聞

消費増税、首相「経済指標など踏まえ秋に判断」
読売新聞

消費税増税判断、首相「有識者会合踏まえ秋に判断」
毎日放送

消費税増税判断、首相「有識者会合踏まえ秋に判断」
TBS News

7人中5人が「予定通りに」=消費増税で集中点検開始-政府
時事通信

消費税増税最終判断へ、有識者からのヒアリング開始
TBS News

景気対策で2兆円の所得減税案 消費税点検会合スタート
中国新聞

消費増税へ景気点検、財政・企業負担も焦点
日本経済新聞

消費増税、最終判断へ賛否聴取 集中点検会合始まる 31日まで6日間
SankeiBiz

【消費増税点検会合】 メンバーは容認派が半数以上
MSN産経ニュース

消費税率引き上げ 首相、10月上旬までに最終判断
日本経済新聞

どうなる?消費増税
テレビ東京

「最終的に私が判断する」 消費増税で安倍首相
asahi.com

NY市場 円安の動き根強い 消費税増税は円安シナリオか
Klug クルーク

消費増税、集中点検会合始まる 反対論も(東京都)
日テレNEWS24

安倍首相、消費増税について「議論をふまえて、わたしが決める」
FNN

消費税会合開始 県民不安、理解の声も「生活どうすれば…」
茨城新聞 

消費増税の判断、秋に判断したい~安倍首相
日テレNEWS24

消費増税の是非 民意は「反対」が大勢だ
中日新聞

首相 消費増税 意見聴取踏まえ判断
NHK

消費税率引き上げ集中点検会合 「慎重」少数派に首相ブレーン浜田氏ら
SankeiBiz

消費増税の可否、集中検証 最終判断へ「点検会合」スタート
SankeiBiz

政府、集中点検会合スタート−消費増税の是非議論
日刊工業新聞

消費増税めぐる集中点検会合始まる 有識者ら60人にヒアリングへ
FNN

財政再建、脱デフレ両立焦点 消費税率引き上げ集中点検会合
SankeiBiz

消費増税を行うかどうか判断するため、政府は、6日間で総勢60人に上る有識者のヒアリングを始めました。
テレビ朝日

消費増税検討会合後の出席者の主な発言
日本経済新聞

消費増税、政府・与党で浮上 来年4月、予定通り8%
MSN産経ニュース

【消費増税点検会合】 賛否吸い上げ、熟慮の姿勢アピール
MSN産経ニュース