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【政治】橋下氏、慰安婦問題を巡るサンフランシスコ市議会の避難決議に反論

まだくすぶっていたのか、という印象のニュース。

今年の5月、沖縄に駐留している米軍に対し「米兵による婦女暴行事件が頻発しているのだから、それをコントロールするためにも性風俗店を利用してはどうか」と提案した、との報道から発展した一連の失言問題。「従軍慰安婦を容認する発言」として韓国のみならず、米国も不快感を示し、橋下氏の訪米中止にまで発展しました。その後、韓国の元従軍慰安婦とされる女性が来日したものの、体調不良等で橋下氏との面会を行わずに帰国した、といった騒動が報道されました。その後、7月の参院選で橋下氏が共同代表を務める維新の会が惨敗、そのどさくさに紛れてこの問題に関する報道はめっきり聞かなくなりました。

サンフランシスコ市は橋下氏の発言を非難する決議を6月22日に採択しています。「慰安婦制度を正当化する発言である」との理由です。

この決議案に対し、橋下氏は22日、サンフランシスコ市議会に「間違った事実認識に基づく非難であるため撤回していただきたい」といった内容の書簡を送ったことを発表しました。8月13日付で送り、20日にはサンフランシスコ市に届いているとのことです。

 

さて、そもそもどんな問題だったのか、少し振り返ってみましょう。

 

もともとの発端は橋下氏が沖縄駐留米軍に対して「性風俗店を利用してはどうか」と提案したことから始まりました。その背景には沖縄米軍による現地での婦女暴行事件の多発があります。橋下氏はこれを「米軍が兵士の性を十分にコントロールできていないため」と考えたようです。そこで、犯罪を起こされるくらいなら認可を得ている性風俗店を利用した方がまし、と考えたのでしょう。以下が橋下氏自身による背景の説明です。

 

でも、慰安婦制度じゃなくても風俗業ってものは必要だと思いますよ。それは。だから、僕は沖縄の海兵隊、普天間に行った時に司令官の方に、もっと風俗業活用して欲しいって言ったんですよ。そしたら司令官はもう凍り付いたように苦笑いになってしまって、「米軍ではオフリミッツだ」と「禁止」っていう風に言っているっていうんですけどね、そんな建前みたいなこというからおかしくなるんですよと。

法律の範囲内で認められている中でね、いわゆるそういう性的なエネルギーを、ある意味合法的に解消できる場所ってのが日本にはあるわけですから。もっと真正面からそういうところ活用してもらわないと、海兵隊のあんな猛者のね、性的なエネルギーをきちんとコントロールできないじゃないですかと。建前論じゃなくてもっとそういうとこ活用してくださいよと言ったんですけどね。

(SYNODOS“橋下徹大阪市長「米軍の風俗業活用を」はいかなる文脈で発言されたのか(2013年5月13日)”)

 

これがまず非難されました。その多くは「性を売り物にしていい女性なんて存在しない」「性風俗店を利用するなんてけがらわしい」といった反応でした。米軍司令官の反応からも見えるように、性風俗店そのものが話題に出ることそのものに対する激しい抵抗感のようなものがあるようです。それに対する橋下氏の反応は次のようなものでした。

 

「日本国において法律で認められた風俗業を否定することは自由意思でその業を選んだ女性に対する差別だ」

(朝日新聞“橋下氏「風俗女性への差別だ」 石原氏「間違ってない」”)

 

その後、橋下氏はこの性風俗店がらみの発言については謝罪の上撤回しています。しかしその後、取材に対する発言が大きく取りざたされるようになります。

 

しかし、なぜ、日本の従軍慰安婦問題だけが世界的に取り上げられるかというと、その当時、慰安婦制度っていうのは世界各国の軍は持っていたんですよ。これはね、いいこととは言いませんけど、当時はそういうもんだったんです。ところが、なぜ欧米の方で、日本のいわゆる慰安婦問題だけが取り上げられたかというと、日本はレイプ国家だと。無理矢理国を挙げてね、強制的に意に反して慰安婦を拉致してですね、そういう職に就かせたと。

 レイプ国家だというところで世界は非難してるんだっていうところを、もっと日本人は世界にどういう風に見られているか認識しなければいけないんです。慰安婦制度が無かったとはいいませんし、軍が管理していたことも間違いないです。ただ、それは当時の世界の状況としては、軍がそういう制度を持っていたのも厳然たる事実です。だってそれはね、朝鮮戦争の時だって、ベトナム戦争だってそういう制度はあったんですから、第二次世界大戦後。

(SYNODOS“橋下徹大阪市長「米軍の風俗業活用を」はいかなる文脈で発言されたのか(2013年5月13日)”)

 

この辺りの発言が、「慰安婦の存在を容認するもの」として非難を浴びるようになります。この発言が「慰安婦は必要だった」という発言ととられ、「旧日本軍による従軍慰安婦を正当化するもの」とされました。しかし、この発言を見る限り、橋下氏は従軍慰安婦を正当化しているようには見えません。むしろ、世界各国が兵士の性コントロールのために慰安婦をもっている事実を否定したがっていることを指摘しています。上記の米軍司令官の反応からも、兵士の性問題に関しては一切口にもしたくない、という反応です。さらに、旧日本軍の従軍慰安婦が「強制連行だった」として非難を浴びるのは事実無根であり、公平ではない、とも発言しています。

橋下氏の発言はおそらくそもそもの問題意識だったであろう「沖縄の米兵による婦女暴行事件をいかに減らすか」というところから「旧日本軍が従軍慰安婦をもっていたことを非難するのは事実無根だ」という主張に入れ替わっていきます。この発言の根底には「戦場における兵士の性規律のコントロール」という意識があるように見えます。

現実問題として、第二次世界大戦中にいわゆる慰安婦制度をもっていなかったソ連軍による日本人女性の強姦事件が相次ぎました。ベトナム戦争においては、派兵された韓国人兵士によるベトナム人女性に対する強姦が日常化されていました(ライダイハン問題)。橋下氏の主張は「慰安婦をもつことで軍の規律を保ち、戦地での強姦略奪を防いでいた」というものです。これは結局の所、「戦地での強姦略奪を黙認するのか、それを軍がコントロールするのか」という価値観の違いによるものだろうと思います。

 

僕は、従軍慰安婦問題だってね、慰安婦の方に対しては優しい言葉をしっかりかけなきゃいけないし、優しい気持ちで接しなければいけない。意に反してそういう職業に就いたということであれば、そのことについては配慮しなければいけませんが。

(SYNODOS“橋下徹大阪市長「米軍の風俗業活用を」はいかなる文脈で発言されたのか(2013年5月13日)”)

 

橋下氏はこのように述べ、「事実に対してはしっかり対処するが、事実無根な非難であればそれは正す」という姿勢を貫いています。それが今回のサンフランシスコ市への書簡となったのでしょう。今更のようにも感じますが。

 

日本維新の会の橋下共同代表(大阪市長)は22日の記者会見で、いわゆる従軍慰安婦問題に関し、「どういう事実だったのか、『歴史的な資料でここまで確定できている』ということを英文にして発表したい」と述べ、党として史実を検証する意向を示した。

(読売新聞)

 

橋下氏はこのように、慰安婦に関する史実の検証を行う意向を示しています。橋下氏は自身への非難を「事実誤認」としているのですから、こうした調査を行うのは正しい判断と思います。

 

【参考リンク】

【ニュースソース】

橋下氏、サンフランシスコ市議会に反論書簡 慰安婦発言
asahi.com

米市議会の非難決議「撤回を」=慰安婦発言で書簡-維新・橋下氏
時事通信

慰安婦発言巡る問題 橋下市長 米議会に撤回求める書簡
毎日放送

橋下市長「慰安婦発言は誤解」反論書簡
デイリースポーツ

慰安婦問題検証、英文で発表へ…橋下代表
読売新聞