ニュースを比較してみるブログ

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【私見】ホワイトカラーエグゼンプションを見直してみる

政府がホワイトカラーエグゼンプションの実施を検討している、とのニュースが報じられたとき、多くのメディアが「サービス残業を助長し過労死を誘発する悪法である」として批判しました。ほとんどのメディアがこれほどに批判するホワイトカラーエグゼンプションですが、一方で私の友人知人にはこれに賛成する立場が少なくありません。その温度差の違いに興味をもったため、ここであらためてホワイトカラーエグゼンプションを見直してみたいと思います。

 

そもそもホワイトカラーエグゼンプションとは?

各国の労働法制において、労働時間の規制がなされていることを前提としてその規制の適用を免除し、または例外を認めることで、労働時間の規制を緩和することをいう。狭義には労働時間そのものに関する規制についての緩和を指すものであるが、労働時間規制に付随する規制として、労働時間に応じた賃金の支払いの強制や、一定の時間を超えた超過時間についての割増賃金の適用義務化などが設定されていることから、広義にはこれらの適用の免除についても本制度の範疇として理解される。

Wikipedia

 

この説明だと非常に分かりにくいのですが、要するに「勤務時間を自己責任で自由に決められますよ。定時に勤務しなくてもいいかわり、場合によっては土日出勤も時間外労働にはなりませんよ。ただし、土日じゃなくても週休二日は確保しますよ」という制度(※これは労働時間にかんするものだけなのでWikipediaでいうところの狭義の定義になります)。

ポイントは「自己責任で」「勤務時間を自由に決められる」というところ。ホワイトカラーエグゼンプションの利点は例えば企画職や研究職のように勤務時間=生産性ではない職種において、勤務時間あたりの生産性を向上させることがそもそもの目的です。「今日はアイディアがわかないから会社にいっても仕方ないや」というときにそのメリットが活きてきます。

一方、勤務時間に制限がないため、どれだけ長く会社にいても残業代は支払われない、ということになります(もちろん深夜帯の勤務に対しては割り増し賃金が支払われる、という規制があります)。そのため、たとえばプレゼンの数日前あたりからは毎日泊まり込みで家にかえれない、なんていうことも十分起こりえます。

 

少し話は違いますが、私が以前勤めていた会社では見なし残業制が運用されていました。残業代が出ない分、基本給に20時間分の残業代があらかじめ上乗せされていたのです。これを知ったのは入社して3ヶ月目くらい、先輩社員と外出したときにたまたま教えてもらったときでした。これはメリットにもデメリットにもなり得ます。毎日定時で帰れば20時間分の残業代は丸儲けですが、月20時間以上残業するとその残業代はサービスになってしまう、となります。

 

ホワイトカラーエグゼンプションにしろ、見なし残業制にしろ、そのメリットを活かすも殺すも、それを選択した従業員の“自己責任”ということになります。

 

なぜこんなに反発が大きいのか?

労基法では、労働時間の上限は1日8時間、週40時間と規定されているが、導入されれば「ご自由に」ということで制限は取っ払われてしまう。つまり、残業代も休日・深夜割り増しもゼロ。ただでさえ、30~40代中間管理職は、上司と部下に挟まれて精神的な負担が大きいのに、給与まで抑えられたらやりきれない。

ゲンダイネット

年収800万円を超えるような大企業の課長級以上の社員を想定。時間外労働に対する残業代は支払わない上、休日、深夜勤務での割増賃金もない。経済産業省は自分の判断で働き方を柔軟に調整できるようになり、生産性向上につながるとしている。

(47News)

 

ゲンダイネット、47Newsのいずれも「週40時間を超えても休日出勤しても残業代や割り増し手当はなし」というところが強調されています。。すでに述べたように、ここはホワイトカラーエグゼンプションのデメリットの部分です。しかしなぜこのデメリットの部分ばかりが強調されるのでしょうか。

 

私個人の見方では、日本人の労働に対する考え方に原因があるのだと思います。

日本では「長時間はたらくこと」が「良いこと」とされています。多くの会社では定時に帰るのが気まずい雰囲気になっており、すでに仕事が終わっているのに会社にいないと自分の立場が悪くなるのでだらだら居続ける、ということが頻繁に起こっているようです。残業時間をちょっとでも長くするため、すぐ終わる仕事でもだらだらと引き延ばす人も見られました。

以前の会社でも、残業時間が多ければ多いほど人事に高く評価されていました。期首の社長挨拶では「みなさん、月100時間200時間の残業はあたりまえですよ」と、見なし残業20時間を超える残業時間を要求していました。サービス残業の強要です。

つまり、労働の質ではなく、労働の量で評価するところがあるのです。意味のないことでもとにかくたくさんやれば良い、という効率度外視の部分が多々あるように思います。

 

この意識が、ホワイトカラーエグゼンプションのメリットを十分に活かしきれない、むしろデメリットばかりが強調される土台となっているように思います。こうした土台があるかぎり、メディアが報じているようにホワイトカラーエグゼンプションは「サービス残業の助長」「過労死の誘発」の元になるでしょう。

 

成果主義報酬は成功したか?

ホワイトカラーエグゼンプションにおける労働の質と密接に関係しているのが「成果主義報酬」です。勤務時間で評価できない以上、成果で評価するほかなくなります。

かつて日本でも「成果主義」の導入が盛んに叫ばれました。私が新卒で入社した会社も1年後には「成果主義」を叫ぶようになりました。その結果何がおこったか?優秀な人材の流出と給与カットです。明確な数字のある営業職なら分かりやすいのですが、成果のいまいちはっきりしないデザイン職や研究開発職では、結局難癖つけられて給与が下がり、優秀な人材がどんどん辞めていく、という結果になりました。※いまはその会社、派遣社員ばかりの会社になり下がった、と聞いています。

 

このように、ただしく運用すれば社員のモチベーション向上につながるはずの制度が、日本の風土にはあわずに「コストカット」に使われてしまうことは往々にしてあるようです。

 

結論

以上の議論をふまえて、私個人としてはホワイトカラーエグゼンプションに“条件付きで”賛成します。

その条件とは、

  • 「長時間労働が美徳」の意識をなくすこと
  • 「成果主義」がただしく運用される土壌をつくること

この二点です。これらが満たされなければ、各メディアが報じているように「サービス残業の助長」「過労死の誘発」のための制度として使われかねないからです。

 

 

【参考】

ホワイトカラーエグゼンプション
Wikipedia

安倍政権でゾンビのように復活した「残業代ゼロ法案」
ゲンダイネット

労働時間規制に特例  一部企業で実験導入検討  「過労死招く」労組反発
47News

 

 

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