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【国際】韓国で戦後被害の訴えが加速、韓国国内の内輪もめに発展か?

第二次世界大戦の戦後補償問題で、韓国人被害者が司法に訴える動きが加速しています。12日には広島や長崎で被曝した韓国人の原爆被害者が韓国政府を相手取り慰謝料と損害賠償を求める訴訟をソウル中央地裁に起こしています。また、“【国際】韓国高等裁判所が戦時強制労働で三菱重工に賠償命令”でも書いたように7月30日、韓国人を強制労働に徴用したとして三菱重工を訴え、三菱重工側に賠償金の支払いを命じる判決をくだしています。さらに、元従軍慰安婦とされる原告12名が日本政府に損害賠償の支払いを求める裁判を13日にもソウル中央地裁に訴える構えのようです。

こうした個人の戦後賠償に関わる請求権は1965年に締結された「日本国と大韓民国との間の基本関係に関する条約」、いわゆる日韓基本条約で解決されているはずです。

 

植民地支配にかかわる損害賠償など請求権の問題は1965年に結んだ日韓請求権協定に「完全かつ最終的に解決された」と明記してある。ところが、韓国政府は従軍慰安婦や原爆被害者などの問題は協定で解決していないと主張。韓国憲法裁判所は2011年8月、韓国政府が日韓対立を放置しているのは憲法違反、との決定を出した。

日経新聞

 

ただ、ここで興味深いのは原爆被害者の訴えが韓国政府を相手取っていることです。

 

戦時中、広島や長崎で被爆した韓国人の原爆被害者79人が12日、韓国政府を相手に慰謝料を請求する訴訟をソウル中央地裁に起こした。被害者への賠償問題について日本政府と話し合うよう韓国政府に圧力をかける狙い。

日経新聞

 

もしかしたら「これまで日本政府にさんざん訴えてきたが何も出てこないので、韓国政府を訴えて日本政府と戦わせる、それでも何も出てこなければ韓国政府から賠償をいただく」という原告側の裏の狙いがあるのかもしれません。

 

さて、すでに書いたように、日韓基本条約で個人の請求権は完全に解決された、としています。

 

  • 両締約国は、両締約国及びその国民(法人を含む。)の財産、権利及び利益並びに両締約国及びその国民の間の請求権に関する問題が、千九百五十一年九月八日にサン・フランシスコ市で署名された日本国との平和条約第四条(a)に規定されたものを含めて、完全かつ最終的に解決されたこととなることを確認する(個別請求権の問題解決)。
  • 一方の締約国及びその国民の財産、権利及び利益において、一方の締約国及びその国民の他方の締約国及びその国民に対するすべての請求権であって1945年8月15日以前に生じた事由に基づくものに関しては、いかなる主張もすることができないものとする(相手国家に対する個別請求権の放棄)。

Wikipedia日本国と大韓民国との間の基本関係に関する条約”)

 

もともとは日本政府が個人に対して賠償を行いたいから、として賠償の対象となる人たちの名簿の提出を韓国政府に求めていました。しかし韓国政府は名簿の提出を拒否、個別賠償の支払いは韓国政府が自身で行う、として日本政府はそれを承諾しました。ところが、韓国政府は個別賠償の支払いを行わず、日本から受け取った賠償金を国内インフラ整備に使ってしまいます。

 

韓国政府はこれらの資金を1971年の対日民間請求権申告に関する法律及び1972年の対日民間請求権補償に関する法律(1982年廃止)によって、軍人・軍属・労務者として召集・徴集された者の遺族に個人補償金に充てた。しかし戦時徴兵補償金は死亡者一人あたりわずか30万ウォン(約2.24万円)であり、個人補償の総額も約91億8000万ウォン(当時約58億円)と、無償協力金3億ドル(当時約1080億円)の5.4%に過ぎなかった。また、終戦後に死亡した者の遺族、傷痍軍人、被爆者、在日コリアンや在サハリン等の在外コリアン、元慰安婦らは補償対象から除外した。
韓国政府は上記以外の資金の大部分は道路やダム・工場の建設などインフラの整備や企業への投資に使用し、「漢江の奇跡」と呼ばれる経済発展に繋げた。

Wikipedia日本国と大韓民国との間の基本関係に関する条約”)

 

Wikipediaにあるように、日本から受け取った賠償のための資金のうち賠償に使われたのはわずか5.4%。すでに日本から賠償の賠償金は渡っているはずなのに、それを個別賠償に使わなかった当時の韓国政府に問題がある、と言わざるを得ません。

 

さて、この件について、朝日新聞に興味深い記述があります。

 

慰安婦や在韓被爆者の訴えを受けて韓国憲法裁は2011年、「請求権問題で韓国政府が日本と交渉しないのは不作為」とする違憲決定を出した。ただ、その後も、この問題での政府間協議が実現していないため、元慰安婦らは「(韓国)政府に任せても前進がない」とし、司法を通じて日本政府との話し合いを求めることにした、という。

(朝日新聞)

 

朝日新聞によると、そもそも従軍慰安婦や原爆被害者らの訴えで「韓国政府は請求権に関して日本政府と交渉せよ」との判決を出しています。ところが韓国政府はそれを怠っており、「韓国政府に圧力をかける必要がある」という流れになっています。

そのように考えるとこのニュース、韓国vs日本という構図ではなく、韓国国内の内輪もめの様相を呈しています。おそらく原告らとしては賠償が出てくるのならどこからでも良い、という考えなのかもしれませんし、一方の韓国政府としては日本から受け取った賠償金を賠償に使わなかったのがばれるのはまずいしお金も払いたくない、という考えなのかもしれません。そうなるといきおい矛先は日本に向いてくるはずで、どうもあまりいい状況ではなさそうですが、はたして、原告団がいつまでも出てこない賠償金にどこまで我慢できるでしょうか。

 

今年の2月に発足したばかりの韓国の朴政権ですが、すでに不満が噴出しており、反政府デモが8月10日に発生しています。韓国国内の内輪もめはますます拡大していきそうです。

 

 

【ニュースソース】

従軍慰安婦問題
時事通信

元慰安婦の証言録 日本政府などに送付へ=韓国自治体
朝鮮日報

戦時被害の請求権、司法に訴え 韓国で動き加速
日本経済新聞

韓国人の元慰安婦、民事調停申し立て ソウルの地裁で
asahi.com