ニュースを比較してみるブログ

世にあふれるニュースを報道のされ方を比較、掘り下げていきます。国際、政治、経済を主に取り上げています。やや右寄りの傾向あり。

【国際】米中人権対話が習政権で初実現も「内政干渉」と反発

7月31日に米中の高官が人権状況について話し合う「米中人権対話」が行われたことを、新華社通信、AP通信などが3日に報じました。

米中人権対話は中国の政治犯の問題、司法改革、厳しい宗教管理政策による信教の自由の侵害、チベット問題などが主要テーマとしており、1990年のクリントン政権時代に始まりました。18回目となる今回は、昨年5月に渡米した人権活動家、陳光誠(ちん・こうせい)氏の親族への当局の報復や、ノーベル平和賞を受賞した民主活動家、劉暁波(りゅう・ぎょうは)氏の妻の自宅軟禁などの具体名を挙げて人権状況の改善を要求。対する中国は「個別事案を利用した内政干渉」だと反発しています。

 

米側は中国のチベット族ウイグル族など少数民族の居住地区で、宗教の自由が厳しく制限されていることにも懸念を表明。チベット仏教最高指導者、ダライ・ラマ14世と対話を進めるよう中国側に要求した。
中国側は「中国の人権状況は歴史上、最も良い時期にある」と強調。「個別の事案を利用して中国の司法と内政に干渉することに反対する」とし、双方の議論はかみ合わなかったもようだ。

中国新聞

 

このように国際的には「人権対話はかみあわなかった」とする論調での報道となっていますが、中国メディアである中国国際放送では

 

席上、中国側は、ここ数年の民主的法制度の建設や国民生活の改善など分野で収めた成果を紹介し、中米間の新しい型の大国間関係構築に対する人権対話がもつ重要性を強調しました。また双方の対話は、相互に尊重し合い、平等に対処してゆき、互いに相手の内政に干渉しないなどの基本原則を踏まえるべきだという中国側の一貫した主張を表明しました。
これに対しアメリカ側は、社会と経済の発展の促進や貧困撲滅など分野で中国が収めた成果を十分評価しました。そして双方は今回の対話は率直な雰囲気に包まれており、これは相互理解を深めることにプラスとなるとの認識を表明しあいました。

(中国国際放送)

 

として人権対話がうまくいったと強調。この報道のトーンの違いが気になります。

 

このブログでも“【国際】中国・新疆ウイグル自治区で暴動、中国の差別的政策に米が懸念を表明”(6月27日)や“【国際】中国の少数民族弾圧激化?3人集まると懲罰の対象に”(5月29日)などの記事で小数民族への弾圧が苛烈を極めていることを書きました。また、6月に行われたオバマ大統領と習近平国家主席の米中首脳会談でも中国の人権問題が話題にのぼったと報道されています。

 

国務省は4月の人権報告で中国政府は天安門事件の犠牲者に関して、いまだに信頼できる公式統計を発表していない。また参加した活動家の多くが今なお嫌がらせを受けていると指摘した。5月の宗教の自由に関する報告書では中国は特に注意が必要な国としてリストアップされた。

(Yahooニュース“米中首脳会談で人権問題提起へ=国務省が発表―米メディア”)

 

さらにその首脳会談に先立つ5月28日、米国高官に中国国内の人権問題を直訴しようとした中国人7名が拘束される、という事件が起こっています。

 

中国を訪れているドニロン米大統領補佐官(国家安全保障担当)に直訴の手紙を渡そうとした重慶市の陳情者7人が28日、北京の米国大使館前で中国当局に拘束された。地方政府による強制立ち退きや暴行、冤罪(えんざい)などの被害を受けた彼らは、「中国の人権問題にもっと関心をもってほしい」とオバマ大統領に訴えようとしたが、実現できなかった。

(MSN産経ニュース“「この国は腐りきっている」重慶市の7人、訪中の米大統領補佐官に直訴も拘束”)

 

今回の対話で中国側は「中国の人権状況は歴史上、最も良い時期にある」と米国に反論していますが、これらの人権蹂躙に関する報道をみると、その反論にどれほどの信憑性があるのか非常に疑問です。

6月28日、NewsWeek日本版は“ソ連末期に似てきた? 習近平政権に迫る「限界」”と題する記事を掲載しています。

 

あまり注目されていないが、最近国家インターネット情報弁公室という組織が政府内で格上げされた。これはネットでの活発な議論に対する管理強化にほかならない。天安門事件の記念日である6月4日の前には、全国各地で改革派が拘束されたという情報が水面下で駆け巡った。
(中略)
だからこそ、中国共産党はメディアを使って反体制派を威嚇している。ただそのやり方に効果はあるかどうかは疑問だ。ソ連共産党ノーベル文学賞を受賞した『収容所群島』の作家ソルジェニーツィンを国外追放した。中国共産党の反体制派に対するやり方とまったく同じだ。たどる道も恐らく同じだろう。

NewsWeek日本版“ソ連末期に似てきた? 習近平政権に迫る「限界」”)

 

このように、現在の中国は崩壊が近づいてきたソ連の状況に似てきている、というのです。習国家主席については独裁者としての性格が非常に色濃いとされており、「かつて中国人民を弾圧した毛沢東のようだ」とも批判されています。

 

経済が停滞を始めて焦りを感じている中国と経済がやや復調し国際的な地位を回復させつつある米国、という構図でしょう。ちょうど両国の間に挟まれた日本にとっても、米中関係の行方は決して他人事ではありません。

オバマ大統領は尖閣諸島問題に関して、6月の米中首脳会談で日本の立場を支持することを表明しています。米国の世界戦略のなかで中国を抑え込むためには日本が重要な位置を占めることになるはずです。その関係が日本にとって吉となるか凶となるかは、現自民党政権の外交手腕にかかっています。

 

 

【ニュースソース】

活動家家族らへの圧力懸念 米中人権対話
中国新聞

中米人権対話が開催
中国国際放送

米中、習政権で初の人権対話
日本経済新聞

米中人権対話…中国は「相互尊重、平等、非内政干渉」を主張
サーチナニュース