ニュースを比較してみるブログ

世にあふれるニュースを報道のされ方を比較、掘り下げていきます。国際、政治、経済を主に取り上げています。やや右寄りの傾向あり。

【国際】レノボPC使用禁止令発令!?ハッキング用工作が見つかる

オーストラリアの経済誌「オーストラリアン・ファイナンシャル・レビュー」(AFR)が7月27日、イギリス、アメリカ、オーストラリア、カナダ、ニュージーランドの5カ国の政府機関で中国・レノボ社のPCが使用禁止になっている、と報じ、波紋を呼んでいます。その後、7月30日付のイギリス紙インディペンデンスも、イギリスの情報機関がレノボ社製PCの使用を禁止していることを明らかにしています。

 

 AFRによると、レノボの回路から典型的な脆弱性を超える「悪意ある修正」が発見され、PCの利用者が知らないところで、外部からアクセスされる可能性があるという。いわゆる「バックドア」(勝手口)と呼ばれる手法だ。

 (J-CASTニュース)

 情報局保安部(MI5)や政府通信本部(GCHQ)が製品を調べたところ、外部からの操作でパソコン内のデータにアクセスできる工作が施されているのを発見した。科学者は通常のセキュリティー保護をバイパスする秘密の裏口がチップに最初から仕込まれているとの見解を示したという。
GCHQなどはコメントを拒否しているが、使用禁止の通達は二〇〇〇年代半ばに米国、カナダ、オーストラリア、ニュージーランドの情報機関でも出されたという。

東京新聞

 

このように、パソコン内部にチップが組み込まれ、それが外部アクセスを可能にする、ということのようです。機密書類を扱う業務には適さない、として、各国の政府機関が使用禁止令をだしていました。こうした事態に対し、専門家は次のように答えています。

 

故意な変更によって通信機器の安全性を低下させるとは、事実であればなんとも恐ろしいやり方だ。だが、あるテクノロジー分野の専門家は、半導体市場のグローバル化にともなって、こうした事態は避けることが難しくなっていると語る。「故意に不正な変更が加えられた半導体回路がグローバルなサプライチェーンの中に出回ることは、可能などころか不可避な状態になっている」というのだ。

(ロケットニュース24 )

 

 

もしこれが事実だとしたらレノボは大きく信頼を失うことになります。

一方で、こうした報道が「レノボを意図的に市場から締め出す陰謀なのでは?」との声も聞かれます。ただ、その声がいかんせん弱く感じられるのは、過去、同じく中国のパソコンメーカーである華為技術(ファーウェイ)の製品にも“スパイ容疑”がかけられ、オーストラリアやアメリカなどから締め出しをくらった経緯があるためです。

 

通信機器メーカーの「スパイ疑惑」が完全に消えたわけではない。同じく中国の通信機器メーカーである『Huawei(ファーウェイ)』の製品に関しても、オーストラリア政府は通信インフラに使用しないことを決定している。

(ロケットニュース24)

 

ところが、疑いをかけた米国のその後の調査によると、ファーウェイのスパイ活動を証明する証拠は見つからなかった、と結論づけられています。

 

この調査は、諜報機関やその他の機関が協力して実施したもので、ファーウェイの活動について、およそ1000社の通信機器購入担当者に聞き取りを実施。その結果、ファーウェイがスパイ行為を行っていることを裏付ける具体的な証拠は見つからなかったという。

(WirelessWireNews“>「ファーウェイによるスパイ行為の証拠は見つからず」- ホワイトハウスが調査結果公表”)

 

すでにこのような報道があるにも関わらず、各紙の報道の中にファーウェイのスパイ容疑疑惑に触れているのには、具体的な証拠の有無にかかわらず、ファーウェイが中国人民解放軍と密接に関係しており、ファーウェイ製品が中国のスパイ活動に利用されているのではないか、との憶測が流れているためのようです。

 

2012年10月、米連邦議会下院の諜報委員会 (The House Intelligence Committee) は、ファーウェイと中興通訊(ZTE)社の製品について、中国人民解放軍中国共産党公安部門と癒着し、スパイ行為やサイバー攻撃のためのインフラの構築を行っている疑いが強いとする調査結果を発表し、両社の製品を合衆国政府の調達品から排除し、民間企業でも取引の自粛を求める勧告を出した。ファーウェイはこの勧告に反発した。

Wikipedia>華為技術”

 

調査会社のIDCによると、世界のパソコン出荷台数シェアは2013年4月〜6月期でレノボがトップだったとのこと(ITmediaニュース“>世界PC出荷台数、13.9%減と過去最大の減少率──IDC調べ”)。これまで世界シェアトップはHPが守ってきましたが、ここへきてレノボが躍進しているようです。日本国内でも、現在のパソコン出荷台数シェアトップはNECレノボです(MM総研“>2012年度 国内パソコン出荷概要”)。すでに世界中に出回っているレノボ製品、今回の報道が市場にどのような影響を与えるでしょうか。

 

そういえば、6月19日に“>【ビジネス】NEC PC社長にレノボのラピン氏就任、名実ともに「売却」”という記事でNECのパソコン事業が事実上レノボに買収されたとの記事を掲載しました(レノボの社長、ロードリック・ラピン氏は今回の報道に挙っているオーストラリア出身です)。また、昨日も“>【ビジネス】NECがスマホ事業からの撤退を正式発表、スリム化で業績回復なるか”としてNECがスマホ事業から撤退するという記事を掲載しています。もちろん、NECの経営難とその再建のための施策ととるのが自然なのですが、ひとつの可能性として、NECがレノボと完全に縁を切ることで自社をなんとか守ろうとしている、という動きに見ることもできなくもありません。だいぶうがった見方ではありますけれども。

 

世界を席巻しつつある中国製品ですが、ここへ来て暗雲が立ちこめてきました。中国経済が失速傾向にあると言うことも含めて考えると、中国に追い風だった世界経済の風向きはこれで大きく変わりそうです。仮にレノボの潔白が証明されたとしても、中国企業が今後もこのようなフィルターをかけてみられることは覚悟しなければならないでしょう。中国経済の失速がさらに進み、苦境に立たされるとなると、周辺諸国に対する軍事的圧力をさらに強めてくる可能性もあります。

 

今後の動きが気になるところです。

 

【ニュースソース】

>レノボ製PC、情報窃取工作の疑い 米英5カ国情報機関は使用禁止
大紀元

>欧米当局のレノボPC使用禁止に英学者、「中国は敵ではないが友人でもない」―中国メディア
新華社通信ネットジャパン

>レノボPCは「攻撃されやすい」、米国や英国の国防・情報部門で使用禁止に―中国メディア
新華社通信ネットジャパン

>zaikei.co.jp l 中国のレノボ:ファーウェイと同じ運命を辿るか、米英など5カ国の国防省が使用禁止
財経新聞

>中国企業レノボのPCにハッキング工作か!? 「5カ国の国家機関がレノボ製PCの使用を禁止」と大手紙が報じる
ロケットニュース24 

>諜報機関がレノボのPCを禁止したという報道で、世界に憶測が走る
ASCII.jp

>豪州や英国情報機関に「レノボ禁止令」報道 外部アクセスできるように「細工」?
J-CASTニュース

>英情報機関 ハッキング用工作 発見 中国レノボ社製 PC「使うな」
東京新聞