ニュースを比較してみるブログ

世にあふれるニュースを報道のされ方を比較、掘り下げていきます。国際、政治、経済を主に取り上げています。やや右寄りの傾向あり。

【国際】フィリピンで反中デモ、南シナ海の領有権問題で

フィリピンの首都マニラで24日、南シナ海の領有権を主張する中国に対する抗議デモが行われました。参加者は数百人、一般市民の他、政治家や元軍将校、教会関係者など。同じく中国と領有権問題で争っているベトナムからもデモに参加しました。

 

街頭にステージを設け、愛国的な歌を歌ったり、反中スローガンを叫んだりした。デモ指導者の一人は「きょうの中国へのメッセージは単純。侵略を中止しろということだ」と気勢を上げた。

(時事通信)

 

ニュース自体はあっさりしています。が、軍事的圧力を強める中国とそれに反発する周辺国、という図式が見える象徴的な事件でもあります。

 

中国政府は、これまで何度も、「中国は、南シナ海の全ての島に対するフィリピンの領有権の主張を認めない」と強調しています。

(iran Japanese Radio“日本、中国との領土問題におけるフィリピンへの支援を強調”)

 

iran Japanese Radioの報道によると、中国は南シナ海のフィリピン領をいっさい認めない、という強硬姿勢をとっています。その大本には、かつて中国がフィリピンの領土を強引な手段で奪った、という経緯がありそうです。

 

フィリピンの領土だった島を、中国はまんまと奪ってしまったことがあるのをご存知だろうか?1995年、フィリピンから米軍が撤退したタイミングで、中国はフィリピンの領土である島というか、小さな岩場にしか見えないのだが、ミスチーフ礁という島に上陸し、中国漁民を守るためと家を強引に建ててしまった。

その後、その岩場の周囲を開発し、続々と建物を建築し、今や風量発電やヘリポートまで作ってしまった。完全に中国により乗っ取られてしまったのだ。

(BLOGOS“米軍撤退で中国に領土を奪われたフィリピン~尖閣諸島と米軍基地問題”)

 

1995年というと今から18年前。中国が飛躍的な経済成長を始めるすこし前、日本で言うとバブル経済の末期あたりでしょうか。昨今中国が周辺国に軍事的圧力を強めているのは、中国国内の経済成長が鈍化し始め危機感を感じているためだとみるむきもあります。また、南シナ海は石油や天然ガスなどの天然資源が豊富なため、中国だけでなく、各国が領有権を巡って争っている地域でもあります。

 

タイランド湾の石油と天然ガスは、カンボジア、タイ、ベトナム、マレーシアがEEZを主張する海域にある。また、ナトゥナ諸島周辺にも大規模なガス田が存在し、インドネシア、中国、ベトナム、マレーシアの各国が領有権を主張している。スプラトリー諸島も各国が入り組んで複雑な権利を主張している。各国がいくつかの島を占拠・占領するなどして、軍事衝突も含む対立が深刻化している。

コトバンク南シナ海の領有権問題 ”)

 

としてもともとは中国対東南アジア諸国という図式ではなく、中国を含む東南アジア諸国同士が領有権を巡って争っていた地域だったようです。その争いが複雑化してきたため、問題解決に向けた動きがおこりました。

 

各国がいくつかの島を占拠・占領するなどして、軍事衝突も含む対立が深刻化している。2010年の東南アジア諸国連合地域フォーラム(ARF)では南シナ海問題が取り上げられ、11年7月には中国とASEAN外相会議は南シナ海での協力推進をうたったガイドライン(指針)を承認した。

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しかし、この動きに対して中国はARFで承認された協力体制を無視するような動きを展開します。

 

中国は同国初の空母を南シナ海に配備する動きを見せ、海洋権益拡大への動きは活発である。11年に入ってからも、フィリピン資源探査船に対する中国艦艇の妨害や、米・フィリピンの合同軍事演習、中国の漁業監視船投入などに関して、中比両国間で領有権を巡る激しい非難の応酬が繰り広げられている。

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このように、中国が軍事力を背景に東南アジア諸国を威嚇、南シナ海の領有権を独占しようという動きに発展したのです。そのため、フィリピンをはじめベトナム、マレーシア、ブルネイ、インドネシアなどと領有権を争う形となりました。

 

今回のデモ以前に、フィリピンはすでに国際仲裁裁判所に訴えを起こしています。

 

1月、フィリピンは中国との対立が深まっている南シナ海の領有権問題について、国連海洋法条約に基づく仲裁裁判所に提訴した。中国は仲裁裁判の受け入れを拒否したが、この場合でも中国抜きで審理は進む。すでに5人の裁判官が選出されており、フィリピンと中国の主張の正当性を判断することになる。裁判期間は約4年とみられている。

(Yahooニュース“<南シナ海>中国を提訴したフィリピンの正しさ=日本、ベトナムは恥じ入るべき―英紙”)

 

裁判には4年かかる、ということで、訴えを起こしてから半年、まだまだ結果が見える状態ではありません。しかし、国際法廷の場にフィリピンが問題を提起した、という行動は中国に真っ向から対立する姿勢であるとして評価されています。同じく領有権問題で中国と対立する日本、ベトナム、インドネシアなどの出方に影響するだろう、と見られています。

 

尖閣諸島問題で日本も中国との領有権争いを繰り広げています。フィリピンでの出来事は決して対岸の火事ではありません。

 

 

【ニュースソース】

「いじめやめて」マニラで反中国デモ、ベトナム人も参加
asahi.com

マニラで500人が反中デモ
MSN産経ニュース

南シナ海への「侵略中止せよ」=反中デモ、政治家も参加-比
時事通信

フィリピンで反中国デモ 南シナ海での領有権巡り
テレビ朝日