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【国際】“世界でもっとも幸せな国”ブータンで総選挙、格差や環境汚染など問題山積

ヒマラヤ山脈にあるブータン王国で13日、王制から立憲君主制に移って2回目の下院議員選挙が行われました。選挙の結果、野党の国民民主党が過半数を獲得して与党のブータン調和等を破り、政権交代となりました。

立憲君主制移行にともなって経済成長や都市化を進めてきた実績をもつブータン調和党でしたが、王制のもとでかたくなに守ってきた伝統文化が変質してしまったり、格差や環境汚染が発生してしまったり、など社会問題が顕在化してきていました。

 

ブータンは国王主導の民主化を経て立憲君主制に移行し、今回の下院選は2008年に続き2度目。PDP(国民民主党)は改選前に2議席しか持たなかったが、都市への人口流入に伴う若者の失業増といった社会問題の深刻化に不満を持つ有権者から支持を集め、地滑り的な勝利を収めた。

(朝日新聞)

 

GNH=「国民総幸福」という、GNP(国民総生産)とは異なる視点からの国の豊かさの指標を前面に押し出してきたブータン。GNHは激しいビジネス競争や常に成長を求められるグローバル経済に倦み疲れた人たちに多いに支持されました。2011年の東日本大震災の後には国王自らが弔問に訪れて以降、ニュースでたびたび報道されるようになったため、ご存知の方も多いかと思います。

そのブータンで選挙、というのに私自身、ちょっと驚きました。ブータンというと穏やかで若く、きりっとした風貌の第5代ジグミ・ケサル・ナムゲル・ワンチュク国王のイメージが強く、王制が敷かれており、議会があるとは思っていなかったからです。

調べてみると、ブータンはたしかに2008年まで絶対君主制を敷いていました。立憲君主制に移行したのは2008年、いまからわずか5年前のことです。これは周辺国のインドや中国となんとか折り合いをつけていくための、政治の近代化策でした。

 

最近では、都市部と農村部の格差が広がったり、物質的な豊かさを求める若者が都市部に出てきたものの就職できなかったりして、幸せを実感できない人が増えていると言われています。
また、ブータンは、歳入のおよそ30%を隣の大国インドからの支援で賄うなど、経済的にインドに依存する状態が続いています。
今回の選挙を巡っては、インドが、先月、ブータンに輸出する灯油などへの補助金を打ち切り、燃料価格が高騰したことから、ブータン国民の不満が高まり、野党の地滑り的勝利の一因になったと言われています。
インド政府が、選挙という微妙な時期にあえて補助金を打ち切った背景には、ブータン政府が、去年、国交のない中国と首脳会談を行うなど、外交で独自の動きを強めていたことに不快感を示すねらいがあったのではないかという見方も出ています。
今回の選挙で誕生する新しい政権は、格差の拡大や失業の増大といった国民の生活に直接関わる問題に加えて、隣国のインドとどう向き合っていくのかという難しい課題を背負うことになりそうです。

(NHK)

 

ブータン調和党が政権をとって以来、ブータンは最大で年間7%という急速な経済成長を遂げました。急速な経済成長は社会構造にゆがみを与えます。中国の例からも分かるように、急速な経済成長の結果、経済格差や環境問題などが発生しました。NHKが報じているように、「幸せを実感できない人が増えている」状況になってきています。

 

これまでブータンが自国の文化をかたくなに守ってこれたのは、江戸時代の日本の鎖国に近い状態だったからです。いまでこそなくなりましたが、年間の観光客入国者制限があったり、入国してからも1泊あたり200ドル払わなければならない、といった制限を設けています。その結果、ブータンに入国できるのは高齢の富裕層に限られ、ブータンの文化が乱されることがなかった、という仕掛けです。

一方、国民のほとんどが農業であるブータンにとって、調和党が進めたような国内インフラの近代化を進めるには海外からの輸入が必須になってきます。そのため、中国やインドと良好な関係を築く必要がありますが、今回の選挙の争点となったように、インドとの関係が悪化、燃料費が高騰するなどの弊害も出てきています。

また、あまり知られていませんが、ブータンはもともと多民族国家でした。しかし、自国の文化を守るという大義に基づいて、1990年以降、ブータン人口70万人のおよそ6分の1にあたる10万人超のネパール系住民を国籍剥奪のうえ国外退去させました。パールには大規模なブータン難民のキャンプが形成され、問題視されています。

 

そして1990年代になると、政府はネパール系住民を強制的に国外退去させていった。いわゆる民族浄化である。その時に、拷問などの人権侵害があったという報告もされている。人権NGOヒューマン・ライツ・ウォッチによると、ブータン国籍を剥奪されたことで、ネパールにある難民キャンプで生活する人々は、現在約10万人いる。ブータンの人口が70万人程度であることを考慮すると、これはかなりの数である。
文化を守るという大儀があるとはいえ、人権の侵害するようなブータン政府の行為は、個人を軽視するという、典型的な集団主義である。

(ちょっと、それって・・・「ブータンは本当に幸福な国か」)

 

このように、ブータンが本当に幸せな国なのか、ということについてはあちこちから疑問符がつけられています。

 

いずれにせよ、ブータンを「幸福度の高い国を目指している」として、ひとつの手本とすることはできるかもしれないが、国家のサイズ、地理的条件、産業構造、経済発展の進度と、どれをとっても現在の日本とはかけ離れている。

(ちょっと、それって・・・「ブータンは本当に幸福な国か」)

 

ブータンが「世界でもっとも幸せな国」として話題になったとき、一部では「日本もブータンをお手本にしよう!」という動きがありました(いまはほとんど聞かれませんが)。しかし実際のところ、引用させていただいたブログの方がおっしゃる通り、種々環境が異なるのに形だけ真似してもうまくいくはずはありません。

昨今の少子高齢化で、「福祉国家である北欧諸国をモデルにしよう!」という動きも一時期ありました。それもブータンを手本にするのと同じように、日本にはなじまないし、それを行ううえでの弊害もあるということを理解する必要があるのです。

 

ブータンの今回の選挙結果が日本の政治経済に直接影響を与えるところはほとんどないでしょう。しかし、その背景を知ることで、私たちがブータンに対してもっているイメージがいかに限定的かを知る機会になろうかと思います。

 

 

【ニュースソース】

ブータンで下院議員選の投票
NHK 

「国民総幸福」の王制懐古も…ブータン下院選へ
読売新聞

ブータン総選挙で野党大勝 初の政権交代へ
47NEWS

13日、2度目の総選挙へ=「非難合戦」に高まる不信-ブータン
時事通信

ブータン総選挙、野党が勝利 政権交代へ
日本経済新聞 

ブータン総選挙、失業や格差顕在化で与野党接戦も
日本経済新聞

ブータン総選挙で野党圧勝 政権交代、確実に
asahi.com

「幸せの国」で政権交代へ 野党、総選挙で勝利 対中接近批判で躍進
MSN産経ニュース

ブータン 初の政権交代へ
NHK

2度目の総選挙、野党勝利=「独自の民主政治確立へ」-ブータン
時事通信

「幸せの国」下院選の投開票…新たな社会問題も
読売新聞

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